小説「新・人間革命」 勝ち鬨 八十六 2018年3月21日

青年が広宣流布の舞台に、澎湃と躍り出るならば、いかに時代が変わろうが、創価の大河は水かさを増しながら、悠久の未来へと流れていくにちがいない。
山本伸一は、青年たちよ! 学会を頼む。広布を頼む。世界を頼む。二十一世紀を頼むと心のなかで叫んでいた。
作家の山本周五郎は、「どんな暴い風雪の中でも育つものは育つ」(注)と綴っている。
伸一は、信じていた――ここに集った青年たちが、新世紀のリーダーとして立ち、友情と信頼のスクラムを社会に広げてくれることを! 広布を担う人材の陣列を幾重にもつくってくれることを!
日蓮大聖人は仰せである。
「物だね(種)と申すもの一なれども植えぬれば多くとなり」(御書九七一ページ)
伸一は、若き魂に、発心の種子を、誓いの種子を、勇気の種子を蒔き続けた。全精魂を注いでの労作業であった。
しかし、それなくして、希望の未来はない。力を尽くして、人を育てた分だけ、人華の花園が広がる。
翌十五日、伸一は、秋田と大分の姉妹交流を記念し、両県の代表と共に、勤行会を行い、秋田文化会館を後にした。
空港に向かった彼は、平和行動展の会場である秋田会館の前を通るように頼んだ。
彼の乗ったバスが会館の前に差しかかると、数十人の青年たちが、横幕を広げて待っていた。
「先生 ありがとうございました」という、朱の文字が目に飛び込んできた。伸一は、笑みを浮かべ、大きく手を振った。
皆が口々に叫んだ。
「ありがとうございます!」
「秋田は戦います!」
「また来てください!」
青年たちも、手を振り続ける。束の間の、窓越しの交流であったが、心と心の対話であり、永遠に忘れ得ぬ一幅の名画となった。
彼は、この秋田での六日間もまた、反転攻勢の一つのドラマとして、広布史に燦然と輝きを放つであろうと思った。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 『山本周五郎からの手紙』土岐雄三編、未来社