随筆 永遠なれ創価の大城 池田大作〉29 燦たり 幸と希望の天地 2018年3月11日


「不屈の東北」に陰徳陽報の春
人華爛漫の理想郷と世界に輝け
 
今、私の胸に響いて、離れない御聖訓がある。
「陰徳あれば陽報あり」(御書一一七八ページ)――これは、打ち続く苦難と忍耐強く戦い抜いて、遂に勝利の実証を示しゆかんとしていた四条金吾への仰せであった。
「竜の口の法難」から七年を経てのお手紙である。
「まことの時」に命懸けでお供した愛弟子の労苦と栄光を、日蓮大聖人は労い讃えられたのだ。
未曽有の東日本大震災から七年。「陰徳あれば陽報あり」とは、大信念と大誠実を貫く東北家族への御本仏の御照覧であり、御賞讃であると、拝されてならない。
 
思えば創価学会は、一九三〇年(昭和五年)の創立以来、「七年」ごとに大きな節を刻んできた。
この前進の鐘を打ち鳴らすリズムの中で、一九五一年(同二十六年)、戸田先生は第二代会長に就任なされた。
それから七年、七十五万世帯の大法弘通という願業を成就された師のもとに地涌の若人が集い、「広宣流布の記念式典」が挙行されたのである。
七年の「七」というリズムは、宇宙根源の法たる「南無妙法蓮華経」の七文字にも通じようか。
この生死一大事を貫く妙法を唱え抜き、風雪を耐え抜いてきた東北の全宝友の“七歳”を思う時、私は、一人ひとりの手を取り、最敬礼して「よくぞ、よくぞ」と讃嘆したい。
そして、誉れも高き「地涌の旗頭」として、世界が仰ぎ見る人材城、後継の青年城をこの七年で堂々と築かれた奮闘に、私は、声を大にして叫びたいのだ。
「みちのくの天地に、『冬は必ず春となる』と蘇生の曲は鳴り渡った。いやまして栄光の勝ち鬨轟く春が来た!」と。
 
青年の心で共に
六十年前の「3・16」の記念式典に、東北の地から勇んで参加した友が、福島県南相馬市にいる。当時、彼は決然と誓った。
「学会と共に、何があっても広布に生き抜くのだ!」と。
その後、人生の試練は繰り返し襲いかかってきた。長男を病で亡くし、自身もがんにかかった。
七十九歳の年に大震災に遭い、大変なご苦労をされてきた。それでも悲嘆の涙を見せず、不退の歩みを進めておられる。
青春時代に不動の誓願を立てた命は強い。
先日、八十六歳となるこの丈夫から、嬉しい報告を頂いた。今、二十四歳の若者と仏法対話をしているというのである。
「世界青年部総会」へ進む後輩たちの力になりたい――その祈りの中で出会った青年である。
実は、この壮年が入会したのも二十四歳の時だったという。青年と若き日の自分の姿を重ね合わせながらの楽しき対話である。
青年を励まし慈しみ、そして共に歩む。
ここに、人材城・大東北のよき伝統がある。
 
妙法の種を継ぐ
今月号の「少年少女きぼう新聞」の表紙を飾ってくれたのは、宮城県気仙沼地域で活動する少年少女部の合唱団のとびきりの笑顔であった。
震災の苦難の中で、「復興」の歩み、「福光」の広がりとともに、成長の足跡を刻んできた王子王女たちである。
昨秋、復興の象徴・気仙沼文化会館が開館した折には、少年部歌「BeBrave! 獅子の心で」を歌い上げ、皆に勇気と希望を広げた。
震災で肉親を亡くしたメンバーもいる。立派に成長した子どもたちの歌声に接して、励まし見守ってきた同志の感慨もひとしおであったろう。
日蓮大聖人は、幼くして父を失った南条時光に仰せである。
 「(父上は)お形見に、わが身を若くして、子息を残しおかれたのでしょうか。
姿も違わないばかりか、(立派な)お心まで似ておられることは言いようもありません」(御書一五〇七ページ、通解)
さらに後には“藍よりも青し”と、時光の「従藍而青」の成長を心から賞讃されたのである。
東北の若人たちは、まさに「不撓不屈のみちのく魂」を受け継ぐ、地涌の菩薩にほかならない。大聖人はまた、時光のお母さんに、「一つ種は一つ種・別の種は別の種・同じ妙法蓮華経
 
の種を心に・はら(孕)ませ給いなば・同じ妙法蓮華経の国へ生れさせ給うべし」(同一五七〇ページ)とも仰せになられた。
妙法の同志は、生死を超えて一体である。亡くなられたご家族の生命とも、ご友人の生命とも、題目で結ばれている。
後継の人材群が広布のため、友のため、社会のために進み働く姿を、霊山から喜び見つめておられるに違いない。
常楽我浄の生命の旅を永遠に一緒に続けていけるのだ。
 
題目の功徳莫大
大聖人は、最愛の子どもに先立たれた親御さんに語りかけられた。
「南無妙法蓮華経と只一遍唱えまいらせ候い畢んぬ、いとをしみ(最愛)の御子を霊山浄土へ決定無有疑と送りまいらせんがためなり」(同一四三五ページ)と。
一遍の題目に無量無辺の大功力を込めて、「あなたのお子さんは絶対に間違いなく成仏されましたよ」と大確信で励まされているのである。
戸田先生は、この御文を通して教えられた。
「いかに題目が力強いかということを、お示しになったお言葉と拝します」と。
言うに言われぬ悲しみや不安のただ中にある人にとっては、時に、御本尊の前に座ることさえままならぬこともあるだろう。
一遍の題目を、絞り出すように唱える時もあるかもしれない。
だが御書には、厳然と「妙法蓮華経の五字を唱うる功徳莫大なり」(一三ページ)と仰せである。
いわんや、大試練に屈せず、広布に生き抜く東北の同志が唱えゆく自行化他の唱題の一声に、どれほどの功徳があるか計り知れない。
 
みちのくの光彩
三十年前(一九八八年)の三月、私は東北の友に長編詩「みちのくの幸の光彩」を詠み贈った。
 
〈私は 君たちを信じている 
 私は 君たちを待っている
    
 いま 世界の人々が
 東北を見つめている
 東北にあこがれている
 東北には
 真の「平和」がある
 真の「人間」がいる
 真の厚き「友情」があると
 東北の発展を
 世界の人々が祈っている〉
 
――まさに今、「世界の人々」が、東北の前進と人材城を仰ぎ見ているではないか!
東北の同志に、平和と友情と人間主義の究極の理想を見出しているではないか!
偉大なる創価の父母たちの励ましと応援を受けながら、東北の青年たちが若芽のごとく伸び伸びと躍動している。
 宮城で! 岩手で!
 青森で! 秋田で!
 山形で! 
 そして福島で!
 我らは「地涌の義」のままに、人華爛漫の理想郷を築いているのだ。
 
広布誓願の総会
大震災から七年に当たる三月十一日、世界青年部総会が開催される意義は、あまりにも大きい。
震災直後から「東北、負けるな! 頑張れ!」と、世界の友はエールを送り続けてくれた。
その若き世界市民が、今再び心を一つに、東北をはじめ地球を結んで、人類の平和と幸福と安穏を祈り、固く誓い合うのである。
心と心をつなぐ青年の連帯のドラマに、私の胸は熱くなる。
創価の父・牧口先生と親交を結んだ東北出身の偉人・新渡戸稲造博士は「希望」と「信仰」、さらに「創像(創造)」の力なくして、人間としての最も重大な使命は全うし得ないと訴え
 
ていた。
若くして世界第一の信仰を持ち、「平和の地球」の未来を創るという、人間として最も尊き使命に生きる創価の青年たちこそ、人類の希望である。
今日の青年部総会は、この揺るぎなき確信と誓願を、全世界に向かって宣言する場となる。
     
かの「陰徳陽報御書」で、大聖人は、さらにこう約束くださっている。
「此は物のはしなり大果報は又来るべしとおぼしめせ」(御書一一七八ページ)と。
不死鳥の負けじ魂で偉大な「陰徳」を積み上げてきた東北家族が、ますます偉大な「陽報」「大果報」に包まれゆくのだ。
さあ、我らは共に、人間の尊厳が輝く「福光」の新時代を大きく開く、一歩また一歩を、力強く踏み出そう!
尊き東北家族の歩みそのものが、末法万年尽未来際までも照らす「幸と希望の光彩」を放っていくとの大確信で!  (随時、掲載いたします)
 
 新渡戸稲造の言葉は『新渡戸稲造全集 第1巻』(教文館)。