小説「新・人間革命」 誓願 十八 2018年4月16日

戸田城聖は、かつて山本伸一に語った。
「人類の平和のためには、"具体的"な提案をし、その実現に向けて自ら先頭に立って"行動"することが大切である」
「たとえ、すぐには実現できなくとも、やがてそれが"火種"となり、平和の炎が広がっていく。
空理空論はどこまでも虚しいが、具体的な提案は、実現への"柱"となり、人類を守る"屋根"ともなっていく」
この師の指針を、伸一は実行してきた。
一九八二年(昭和五十七年)の第二回国連軍縮特別総会開催の際には、「軍縮および核兵器廃絶への提言」を発表。
総会の開会を前にした六月三日、創価学会代表団からデクエヤル国連事務総長に、その提言の文書が手渡された。
ここでは、トランスナショナリズム(脱国家主義)に立脚したNGOこそ、軍縮を実現する大きな役割を担うものであることを述べ、非核保有国の総意をもって、保有国、とりわけ米ソに核兵器の先制使用をしない旨の誓約をさせるよう求めた。
さらに、全地球的な"平和の包囲網"形成をめざし、「非核地域平和保障機構創出のための国連特別委員会」を発足させることなどを提案した。
伸一は、七八年(同五十三年)五月に開幕した第一回国連軍縮特別総会の折にも、十項目にわたる核軍縮核廃絶の提言をしている。
人類を破滅へと向かわせる核の脅威を、看過するわけにはいかなかったのである。
また、八三年(同五十八年)には、第八回となる1・26「SGIの日」を記念して、「平和と軍縮への新たな提言」を行った。
早急に米ソ最高首脳会談を実現し、核兵器の現状凍結を早期に合意するよう訴えたほか、「核戦争防止センター」の設置や、米ソが「軍事費凍結のための国際会議」の開催を呼び掛けることなどを提案したのである。
以来、彼は、毎年、「SGIの日」には記念提言を重ねた。
新しい平和の波を起こそうと、世界への発信を続けた。
声は、人の心を動かし、社会、世界を変えていく。
声をあげることから、新しい一歩が始まる。