小説「新・人間革命」 誓願 百十一  2018年8月6日


創価家族の集い」では、「シ・バス・パラ・チレ」(もしもチリへ行くのなら)を大合唱した。
山本伸一も一緒に手拍子を打った。
  
  この地の人びとは皆
  旅人よ あなたを迎えてくれます
  チリでは ほかの地から来た人が
  どれほど好きか
  あなたは おわかりになるでしょう
  
メンバーは、喜びを満面にたたえ、「世界広布模範」の前進を誓い、熱唱した。
この日、チリの新しき原点が創られた。
二十五日正午、伸一は、大統領府(モネダ宮殿)に、パトリシオ・エイルウィン・アソカル大統領を表敬訪問した。
大統領とは、前年十一月の来日の折に会見していた。
その時、民衆に奉仕するリーダー像、劇的なチリ民主化、環太平洋時代を開く両国の文化交流などをめぐって語らいが弾み、十五分とされていた会見時間は、約四十五分になった。
別れ際、大統領は言った。
「決してこれが、最初で最後の出会いにならないことを望みます。
この次は、ぜひ、わが国で、大統領府でお願いしたい」
その時の約束が実現したのである。
大統領は、東京での会見のあと、伸一とトインビー博士との対談集『生への選択』(日本語版『二十一世紀への対話』)を、すべて読了したことを告げ、再会を喜んでくれた。
語らいでは、文化の力、環境問題などが話題となった。また、伸一は、桂冠詩人として、大統領に長編詩「アンデスの民主の偉容」を贈った。
そこには、こうあった。
 
 「武力に勝る『道理』の力!
  剣の力にも勝る『精神』の力!
  心なき悪しき力は
  たとえ猛威を奮おうと
  所詮 それは一時の幻の勝利
  『道理』の力 『精神』の力こそが
  やがては 納得と歓喜のうちに
  民衆の大地を 広く潤す」