小説「新・人間革命」 誓願 百十七 2018年8月14日
山本伸一は、子どもたちに言った。
仏陀は、偉大なヒマラヤを見て育ちました。
あの山々のような人間になろうと頑張ったんです。
堂々とそびえる勝利の人へと、自分をつくり上げました。
皆さんも同じです。すごいところに住んでいるんです。
必ず偉大な人になれます。
みんな、利口そうな、いい顔をしているね。大きくなったら、日本へいらっしゃい」
彼は、この一瞬の出会いを大切にしたかった。
心から励まし、小さな胸に、希望の春風を送りたかったのである。
翌四日、伸一は、カトマンズ市内でのネパールSGIの第一回総会に臨み、集った百数十人の友と記念のカメラに納まった。
そして「どこまでも仲良く進んでください。
一人ひとりが良き市民、良き国民として、『輝く存在』になってください」と激励した。
メンバーの大多数は、青年であった。
まさに、ヒマラヤにいだかれるように、未来に伸びる希望の若木が育っていたのだ。
さらに、建国三十周年を祝賀する第一回青年友好芸術祭に出席し、十日夕、香港に到着した。
イギリス領の香港は、一九九七年(平成九年)に中国へ返還されることになっていた。
資本主義の社会で暮らしてきた人びとにとっては、社会主義の中国のもとでの生活は想像しがたいものであり、不安を覚える人たちもいた。
一時期、香港ドルが急落し、市場が混乱に陥ったこともあった。
“こういう時だからこそ、香港へ行こう! 皆と会って激励しよう!”
伸一は、そう決めて、八三年(同五十八年)十二月に香港を訪れている。