2010-11-03から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 母の詩 28 11月3日

山本伸一の父・宗一が他界し、入棺した時、母の幸は、慟哭した。 伸一が、初めて目にする母の姿であった。 彼は、日記に綴った。 「……父との旅。母の心情は、心境は誰人にもわからぬであろう。長い、楽しい、苦しい、旅路であったことであろう。英知、地位…

小説「新・人間革命」 母の詩 27 11月2日

山本伸一の父・宗一は、一九五六年(昭和三十一年)十二月十日、六十八歳で他界した。母の幸と、二人三脚で歩み抜いてきた生涯であった。 伸一は、その日の日記に、こう記した。 「私を、これまで育ててくれた、厳しき、優しき父が、死んでしまった。嗚呼。…

小説「新・人間革命」 母の詩 26 11月1日

明るく、忍耐強かった母。どんな時も、笑顔を失わなかった母――。 山本伸一は、その母が、声を押し殺し、背中を震わせて、すすり泣く後ろ姿を目にしたことがあった。 一九四七年(昭和二十二年)五月、長兄・喜久夫が、ビルマ(現在のミャンマー)で戦死した…