小説「新・人間革命」 1月27日 陽光22

 ウィルソン市長は、山本伸一に告げた。

「本日は、会長ご夫妻の訪問に心から感謝申し上げ、最高賓客の証として『市の鍵』をお贈りいたします」

「最高の栄誉です。全メンバーを代表し、謹んで拝受いたします」

 伸一は、感謝の思いを胸に、市の鍵を受けた。

 さらに市長は、市の歴史を綴った本を伸一に贈った。

 そこには、「会長ご夫妻へ、温かい心と尊敬を込めて」との献辞が記されていた。

 また、峯子には、イルカをデザインしたペンダントが贈られた。

 伸一も返礼として、秋の七草をあしらった屏風などを市長に贈った。

 語らいは弾んだ。

 市長は、自ら伸一にコーヒーを注ぎながら、嬉しそうに語った。

「世界平和への会長の指導力、卓越した行動力に、私は敬服しております。せめて滞在中は、ゆっくりと、おくつろぎになってください」

 伸一は言った。

「温かいお心遣い、ありがとうございます。しかし、私には、ここでなすべき仕事があり

ます。未来のために、今、果たすべき使命があります。私に休息はありません。

 それが、民衆のために生きる指導者の宿命ではないでしょうか」

 市長の瞳が光った。

 伸一は、力を込めて語っていった。

「私は、これから大きな仕事をしてもらいたい人には、物事を率直に語ることにしております。

 あなたはお若く、まさに“未来の人”です。自由と民主の旗手であるアメリカ社会の発展のために、大いに活躍していかれる方です。

  そのために健康に留意してください。健康であることが、理想や大志を支える一切の根本です。

 そして、信念と勇気をもって、正義のために生きることです。

 どんなことがあっても微動だにしてはなりません。未来を見すえ、二十年先をめざして、まっしぐらに進んでください。

 そこに、政治家としても、人間としても、勝利があるからです」

 伸一は、一言一言に魂を注ぎ込む思いで話していった。

 市長は頷きながら、その言葉をかみしめるように聞いていた。