「SGIの日」記念提言 (9)

“不戦の潮流”を民衆の手で!



最後に、「東アジア共同体」の構築に向けて、二つの提案をしておきたい。

 第1は、「東アジア環境開発機構」の創設であります。

 2005年12月のマレーシアでの初開催に続いて、今年1月にフィリピンで第2回の「東アジアサミット」が開催されました。

 このサミットと、これに先立ち行われた「ASEAN東南アジア諸国連合)+3(日中韓)」の首脳会議を通じて、地域間対話による信頼醸成と関係強化が進みつつあります。

 しかし課題も山積し、東アジアにおける共同体の建設のような地域統合の実現には、まだまだ遠い道のりを要することも事実です。

 そこで私は、まず特定の分野でパイロットモデルとなる協力体制を構築することが、将来の地域共同体の姿を浮かび上がらせ、地域の国々のモチベーション(動機)を維持する上でも欠かせないのではないかと考えます。

 具体的には、緊急を要する課題である環境・エネルギー分野に特化した地域機関の設置が望ましいのではないでしょうか。

 2002年以来、毎年の「ASEAN+3環境大臣会合」の開催等を通じて、本格的な地域協力を要請する声は高まっています。酸性雨など各分野でこれまで形成されてきた地域的取り組みを「東アジア環境開発機構」の下に一元化し、総合的かつ効果的な対策の推進を目指すことが肝要だと思うのです。

 将来の共同体建設担う人材の育成を

 第2は、「東アジア平和大学院」の設置です。

 ヨーロッパにあって、各分野で統合の牽引力となって活躍している人々を育てる中心拠点となってきたのが、戦後まもなく創設された「欧州大学院大学」でした。

 そこでは半世紀以上にわたり、国家の狭い枠を超えてEUを担う“欧州人”を育てる教育が続けられてきました。東アジアにおいても、将来の共同体建設を見据えて、今の時期から人材づくりのための教育機関を設置しておくべきではないでしょうか。

 そして開設の暁には、カリキュラムを地域的な内容に限定するのではなく、日本に本部がある国連大学などとも連携しながら、国連を軸にしたグローバル・ガバナンス(地球社会の運営)を実現させるための方途について探究していくべきだと考えます。

 以上、日中関係などを中心に、アジアに永続的な平和を確立していくための提案を行わせていただきました。

 アジアに限らず、21世紀の地球平和を展望する時、常に念頭に置くべきは、不戦の潮流を生み出す“目覚めた民衆の連帯”をいかに築き上げていくかという点であります。

 昨年8月、私は国連のアンワルル・チョウドリ事務次長とお会いしました。席上、事務次長が語った「民衆が立ち上がってこそ、この世界を、よりよき人間の世界へと変革していける」との言葉は、私の年来の信念と深く共鳴するものでした。

 SGIが世界190カ国・地域で広げている「人間主義」の運動の眼目は、民衆自身の力で、地球上から悲惨の二字をなくし、すべての人々の平和と幸福を勝ち取ることにあるからです。

 今後も、その誇りと確信を胸に、世界の志を同じくする人々とスクラムを組みながら、21世紀の世界に「平和の文化」を広げ、対話による相互理解で人間の尊厳をともに輝かせていく「対話の文明」の建設に向け、挑戦を重ねていく所存であります。



語句の解説

 注4 大量破壊兵器委員会

 ダナパラ国連事務次長(当時)の提案を受け、スウェーデン政府が支援し、2003年12月にブリクス委員長の下、結成された独立委員会。アメリカのペリー元国防長官をはじめ、世界の軍縮・不拡散問題の専門家14人で構成される。昨年3月まで10回にわたって会議を行い、昨年6月、成果を報告書「恐怖の兵器」にまとめ発表した。

 注5 第6条フォーラム

 NPT再検討会議の決裂という事態を受け、国際NGO「中堅国家構想」のダグラス・ロウチ議長が、核廃絶への道を探る試みとして2005年8月に提唱した構想。第1回のフォーラムは同年10月、28カ国の政府代表が参加して国連本部で開催。昨年9月にはカナダで第3回のフォーラムが行われた。

 注6 コントロール・アームズ

 オックスファム・インターナショナルアムネスティ・インターナショナル、国際小型武器行動ネットワークを中心に進められてきた通常兵器の国際移転の規制を求める運動。世界150カ国以上の100万人を超える人々の賛同を得る中、日本を含む116カ国が決議を共同提案。先月、国連総会において圧倒的多数で決議が採択された。





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