小説「新・人間革命」 陽光25 1月31日

 「なぜ」ということがわかれば、納得して信仰に励むことができる。

 信心の世界には、言葉では説明しきれず、体験を通して実感する以外にない問題も当然あろう。

 しかし、人びとが納得できるように説明するために、努力し、心を砕いていくことは、リーダーである幹部の責務といってよい。

 ゆえに、仏法の法理を説き示した御書への真剣な取り組みが、幹部の必須の要件となるのである。また、そのなかに、教学の深化もある。

 山本伸一は開所式の終了後も、参加者のなかに入り、次々と励ましの言葉をかけていった。

 ある婦人には、こう激励した。

 「仏法は生命の因果の理法を説いており、誰人たりとも、その法理を逃れることはできません。

 何があろうとも、黙々と信心に励み、人びとの幸福のために尽力していくならば、それは、必ず自身の大きな功徳となり、福運になります」

 ベネズエラで社会の繁栄を願い、懸命に信心に励んでいるという青年には、こう訴えた。

 「仏法では、万人が仏の生命を具えていると説いています。

 したがって、その仏の生命を涌現していくならば、どんな試練や逆境にも、絶対に負けることはありません。

 だから、勇気をもって生きていくんです。あなたが戦い、勝っていく未来を、私は、祈り、見つめています」

 伸一は常に、一人ひとりへの励ましに最大の力を注ぎ、仏法という「人間の道」を、「幸福の道」を、「平和の道」を説いていった。

 そして、人びとの胸に、「希望の火」を、「勇気の炎」をともし、人間の蘇生に全生命を傾けたのである。

 それは、国会や国連を舞台にした政治家の言動のように、世間の脚光を浴びることもない、最も地道で忍耐を要する作業である。

 しかし、一人ひとりが強く、はつらつと幸福に生き抜くことこそ、平和の実像であり、社会建設の一切の根源である。

 ゆえに、釈尊も、日蓮大聖人も、一個の人間を全力で励まし、仏法を語り説くことに、生涯を捧げられたのである。

 友の幸せを願う、誠意を尽くした対話のなかに仏道修行があるのだ。