法華経 結要付属

法華経では、万人成仏を実現していく使命が、釈尊から弟子たちに託されます。これが、虚空会の説法の中で示された法華経の主題です。とりわけ悪世に、この法華経を、誰が弘めていくのかが、一番の関心事となっていました。悪世というのは、仏法の教えが混乱して救済力が失われる時代、つまり末法のことにほかなりません。
虚空会の説法では、例えば、三類の強敵(法華経を弘通する人を迫害する3種類の強敵)などが説かれます。そして、悪世に法華経を弘めることが、どれだけ困難極まりないものかが示されていきます。それでも、さまざまな困難を乗り越え、あらゆる国土から集まった菩薩たちは、“私たちが法華経を弘めていきます”と、次々に名乗りをあげました。
しかし、その菩薩たちを退けて、釈尊は別の菩薩たちを、大地の下から呼び出します。これが、地涌の菩薩です。久遠実成によって釈尊の真実の境地が示されますが、その釈尊が、久遠の昔に成仏した時からずっと教え育んできたのが地涌の菩薩なのです。
そして釈尊は、地涌の菩薩に対して、仏の一切の法と実践を付嘱します。「付嘱」とは、仏から、教えの肝要と、滅後の弘教(法華経を弘めること)を進める“使命”を託されることをいいます。
神力品第二十一において、この地涌の菩薩を代表して、そのリーダーである上行菩薩に未来の広宣流布を託すのです。これを「結要付嘱」といいます。
さらに嘱累品第二十二では、地涌の菩薩以外の菩薩を含めて一切の菩薩らに付嘱がなされます。
しかし、こうした付嘱のあり方が示しているのは、釈尊の滅後、特に悪世末法に正法を弘める“主役”はあくまでも地涌の菩薩にほかならないということです。