小説「新・人間革命」 SGI15 1月19日

 世界平和会議の会場は、山本伸一SGI会長誕生の喜びの余韻に包まれていた。

 待ちに待った、世界広宣流布のリーダーが決まったのだ。誰もが高鳴る胸の鼓動を感じていた。

 議長は深呼吸を一つすると、再び話を続けた。

 「さて、われわれが本日、ここに集ったのは、日蓮大聖人の仏法を持つ者として、大聖人の大理想であり、人類の願いである、世界平和実現のためであります。

 その道は長く、幾多の困難が待ち受けていることでありましょう。

 しかし、われわれは固くスクラムを組んで、いかなる苦難をも乗り越え、この地球上に燦たる平和の光が輝き渡るまで戦い抜いていきたいのであります。

 そこで、このわれわれの決意を込めて、次の平和宣言を採択したいと思います」

 ここで事務局長になったアメリカのメンバーが立ち、平和宣言を声高らかに英語で読み上げていった。

 「生存の権利は、人種、民族、言語、風俗の相違を超え、すべての人間に固有で、かつ不可侵の権利である。

 われわれは、この権利の回復と拡大を願う仏法者として、この地球上に恒久平和を築き上げるために、次のたゆまざる実践をめざすものである。

 一、平和創出の原点は、人間の生命に絶対至尊の価値を認めることにある。したがって、われわれは、一人ひとりの心の中に生命尊厳の要塞を築き、平和への人類普遍の精神的基盤を確立しようとするものである」

 ユネスコ憲章の前文には、「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」と謳っている。

 では、人の心の中に、最も堅固な平和のとりでを築くには、どうすればよいのか。それを、この平和宣言では、「人間の生命に絶対至尊の価値を認めることにある」と述べているのである。

 仏法では、万人が尊極無上の仏の生命を具えていると説いている。生命の尊厳をいかに声高に叫んでも、それを裏づける確固不動の哲学がなければ、うたい文句に終わってしまう。

 平和宣言は、生命尊厳の仏法哲理に基づく、仏法者としての信念と良心の叫びであった。