小説「新・人間革命」 SGI16  1月21日

平和宣言を読み上げる声が会場に響いていた。

 「一、平和創出のために、政治や経済の絆より強いものは、生命の尊厳に目覚めた民衆と民衆の心と心の連帯である。したがってわれわれは、平和を愛するあらゆる国のあらゆる人びとと強き連帯の絆を結んでいく。

 一、永続的な平和は、人類のすべてが幸福を享受し得て、初めて実現する。したがって、われわれは、人類の幸せと、その未来の存続に『何をもって貢献できるか』という慈悲の理念を、今後の新しい思想の因子としてゆくことをめざしていく」

 山本伸一は、今、世界の同志によって、日蓮仏法が、人類の平和と幸福の理念として、広く世界に開かれたことを感じていた。

 平和宣言は、さらに続いた。

 「二度まで世界戦争を経験した二十世紀に生きる者にとって、来るべき二十一世紀を最大に人間が謳歌される世紀――すなわち、生命の世紀とすることこそ、後に続く世代に対する最大の義務である。

 ゆえに生命の旗を掲げ、人間精神の覚醒運動に進むわれわれにとっても、残る四半世紀は重大な意味をもつ時代といわなければならない。

 今、その出発点に立ったわれわれは、それぞれが置かれた環境に応じ、立場に応じて、その理念の伝播につとめ、もって恒久平和創出への確かな波動を高めていくことを決意するものである」

 この宣言は全参加者の賛同を得て採択された。

 二十一世紀の恒久平和の実現へ、新しき世界の連帯がつくられたのだ。

 続いて、世界五十一カ国・地域の参加者が紹介された。

 「初めに香港!」

 それぞれの地域名や国名が呼ばれ、メンバーが立ち上がるたびに、大歓声が会場を包んだ。

 カリブ海に浮かぶトリニダード・トバゴからも、ラオスバングラデシュ、また、イランやアフリカのガーナ、ケニア、ナイジェリアからもメンバーが集っていた。

 この世界平和会議に駆けつけるための旅費を工面することも大変なメンバーもいた。

 しかし皆、尊き使命に生きる、各国の幸福の開道者であり、平和のパイオニアである。人類史を転換する無名の英雄たちなのだ。