小説「新・人間革命」 SGI17 1月22日

 世界平和会議は、代表のあいさつに移った。

 アジア代表の香港のメンバーは、一月十九日に文化祭を開催し、香港社会に平和の波動を広げたことを報告した。

 ヨーロッパ代表のフランスのメンバーは、毎年、全ヨーロッパの同志が一堂に集い、欧州家族祭を開催してきたことを述べたあと、その趣旨をこう語った。

 「それは、エゴイズムを克服し、生命を浄化する方途を知った私たちが、ヨーロッパのなかに人間と人間の心の連帯をもって、新たな精神の共同体をつくることをめざした行事であります」

 南北アメリカ代表のペルーのメンバーは、「今日の世界に必要なものは、人類的基盤に立った新しい地球人です」と力説。

そして、世界市民の自覚を生命に深く刻み、一切衆生の生命尊厳を説く仏法の哲理を、広くペルー社会に伝えていきたいと抱負を語った。

 登壇した代表の話のなかで、ひときわ大きな感動を呼んだのは、アフリカ代表のケニアのメンバーのあいさつであった。

 「現在、アフリカは干ばつ、食糧問題等、数多くの難題をかかえております。しかも、どの問題一つとっても、全世界、全地球的規模で取り組まなければ解決のつかない問題ばかりであります。

 しかし、いまだ世界には、そのための共通の精神的基盤が欠如しております。世界を結ぶ、普遍的な精神の紐帯が見いだせずにおります。

 ゆえに、慈悲の哲理を根底に、世界の平和と民衆の幸福を築くために開催された、この平和会議に、私たちは限りない期待を寄せるとともに、重大な使命を感じております」

 賛同の大拍手が広がった。

 人類が立つべき共通の精神的基盤とは、国籍、民族、宗教等々は異なっても、皆が同じ人間であり、同じ地球に住む同胞なのだという認識をもつことである。

 また、生命は尊厳無比であり、いかなる理由によっても、人間を手段化してはならないという思想である。

 さらに、万人が幸福になる権利があるという哲学である。

 それを戸田城聖は「地球民族主義」と表現したのだ。そして、その根底をなす哲理こそ、日蓮仏法なのである。