小説「新・人間革命」 SGI23  1月29日

入信したディーター・カーンは、いやいやながらではあったが、勤行を実践してみた。

 すると不眠症が治り、熟睡することができた。また、娘が校庭の鉄棒から落ちて、病院に運ばれたが、怪我がなかったなどの現証が重なった。

 “これが、仏法の力なのか!”

 彼は、信仰への確信をいだいた。確信は歓喜をもたらし、歓喜は新たなる行動の原動力となる。

 カーンは仏法を友人に語らずにはいられなかった。歓喜あるところに、広宣流布の怒濤の前進が始まるのだ。

 仏法対話の末に、ドイツ人の友人が入信した。その友人が、喜びにあふれて信心に励む姿を見て、彼の確信は、ますます深まっていった。

 カーンは、教学にも取り組み、仏法が生命の尊厳を説く、平和の哲理であることを学んだ。

 また、先輩のメンバーから、かつて会長の山本伸一が、東西の分断の象徴である、ベルリンのブランデンブルク門の前に立ち、ドイツの平和を真剣に祈念してくれたことを聞いた。

 彼は、その山本会長の心を思うと、胸が熱くなった。

 そして、少年時代の悲惨な戦争体験を思い起こし、ドイツ人である自分たちこそが、平和のために立ち上がらなければと決意した。

 さらにカーンは、活動に参加するなかで、人びとの幸福のために奔走し、互いに励まし合うメンバーの姿に、平和の実像を見る思いがするのであった。

 彼は、広宣流布こそ、自分が探し求めていた、生涯をかけるべきテーマではないかと思い始めていた。

 やがて、彼は班長の任命を受けた。五人ほどのメンバーのリーダーである。

 ドイツのメンバーには、日本から渡った、炭鉱で働く青年たちや看護婦(当時)、駐留米軍の日本人妻などが多かった。そのなかで、ドイツ人のリーダーが誕生したのだ。

 日蓮仏法が深くドイツに根を張っていくには、ドイツのことを最もよく知る、ドイツ人がリーダーとなって、活躍していくことが望ましい。

 メンバーは、「ドイツ広布の人材の出現だ」と語り合い、彼を懸命に支え、応援してくれた。