小説「新・人間革命」 SGI35  2月13日

“それぞれの民族が、互いに理解を深め、信頼し合い、団結していかなければ、マレーシアの発展はない!”

 柯浩方は思った。柯文隆も同じ考えであった。

 彼らは、マレーシアの平和と繁栄を願い、懸命に信心に励んだ。そして、万人に「仏」の生命があると説く仏法の生命尊厳の哲理こそ、人間共和の根本思想であるとの確信を深くしていった。

 一九七二年(昭和四十七年)秋、柯兄弟は高康明らと共に来日した。その折、世界各国のメンバーが集って、正本堂落慶を祝う文化祭が開催されたのである。

 そこには民族や国籍、言語などの違いを超え、スクラムを組み、人類の平和を誓い合う崇高なる魂の結合があった。

 柯兄弟は、人間共和の実像を見た思いがした。皆が互いに握手を交わし、讃え合う姿は、夢のようでもあった。

 「兄さん、これだ、これなんだよ。マレーシアにつくらなくてはならないものは!」

 「そうだ。まさに平和の縮図だ!」

 二人は肩を叩き合い、小躍りして喜び合った。

 柯兄弟の胸に、マレーシアに、この人間讃歌の哲理を伝え抜こうとの決意が、熱い闘魂となってたぎった。

 平和は彼方にあるのではない。自分のいるその場所に、信頼と友情の世界を築き上げるのだ。その輪の広がるところに、世界の平和があるのだ。

 柯文隆は世界平和会議の前年(七四年)にも、マレーシア、シンガポールのメンバーと共に、日本での夏季講習会に参加した。

 メンバーが学会本部を訪れた折、山本伸一は本部内で行われていた学生部の会合に皆を招いた。

 遠来の友と、さらに出会いを重ね、励ましたかったのである。

 伸一は入り口に立ち、最敬礼しながら、一人ひとりと握手を交わした。

 自らマイクを握って司会・進行役も務めた。質問会を行い、ピアノも弾いた。汗まみれになりながらの、体当たりの激励であった。

 柯文隆は、その伸一の振る舞いを生命に焼き付けるように見ていた。

 “先生は、まさに命を削って私たちを励ましてくださる。これが仏法指導者の在り方なのか! この精神を受け継がなくては!”