小説「新・人間革命」 SGI41 2月20日

 山本伸一は、最後に、南忠雄に言った。

 「来年になったら出発しなさい」

 南は、ガーナ広布に胸を躍らせながら伸一と別れた。会食の会場を出ると、妻に電話を入れた。彼は結婚して、まだ一年に満たなかった。

 「今度、ガーナに行くことになったよ」

 「よかったわね」

 「うん。永住することになったんだ」

 「…………」

 妻は絶句した。永住するということにショックを受けたのだ。

 南は、この日、ガーナ関係の書籍を購入して帰った。彼はガーナについてほとんど知識がなかった。知っていることといえば、ガーナの名を冠したチョコレートがあることと、エンクルマが大統領を務めたということぐらいであった。

 その後、伸一は、南の妻とも会って激励した。

 「今度、ご主人にはガーナに行ってもらうことになりました。ご苦労をかけますが、一緒に行っていただけますか」

 「はい!」

 彼女は、既に心を定めていたようだ。

 伸一は、諄々と、力のこもった声で語った。

 「夫婦でアフリカに行って、広宣流布の道を開く――これは仏法の法理の上から見れば、過去世からの約束なんです。この世の使命です。したがって、腹を決めて頑張ることが大事です。

 奥さんが、はつらつとして元気であれば、ご主人は頑張れる。しかし、何かあるたびに、めそめそして、愚痴ばかりこぼしていたのでは、ご主人は力を出せません。

 ご主人がガーナで成功するもしないも、すべてはあなたにかかっています。それを忘れずに、強く、強く、生き抜いて、必ず人生の大勝利を打ち立ててください」

 大聖人は「をとこ(夫)のしわざはめ(婦)のちからなり」(御書九七五ページ)と仰せである。

 さらに峯子も、「ご主人のためにもアフリカを好きになってください」と南の妻を励ました。

 この時の伸一と峯子の激励が、彼女の心の支えとなったようだ。

 また、伸一は、南の出発に際して歌を贈った。

     

 遙かなる 君が燃えゆく アフリカに われは命の 唱題おくらむ