小説「新・人間革命」 人間外交18 3月22日

 ブラジルの女性詩人セシリア・メイレレスは高らかにうたった。

 「前進をやめてはいけない 前進は継続していくものだ 続けることが前進だ」(注)

 道を開くことは難しい。しかし、開き続けることは、さらに至難である。だが、それなくしては、道はつながらない。

 だから、山本伸一は、日中友好の開拓の手を休めることはなかった。

 

 「ローマは一日にして成らず」と言われる。偉大な歴史をつくるものは苦闘の積み重ねである。

 青年へ、さらに若き世代へと、バトンを託し続けるために、彼は、次々と行動を重ねた。

 中国青年代表団の一行が、日大講堂から伸一の待つ聖教新聞社に到着したのは、十六日の午後五時過ぎであった。

 伸一は、代表団の一人ひとりを抱きかかえるようにして迎え、固い握手を交わしていった。

 「ようこそおいでくださいました。

 将来の中国の指導者となる皆様方を歓迎することができて光栄です」

 テーブルを囲んで歓談が始まった。

 伸一は、まず、前年の二度にわたる訪中の際、真心の歓迎を受けたことに対して御礼を述べた。

 それに応えて、代表団の団長は語った。

 「中日の友好のために山本会長がなされてきたことは、中国人民の心に永遠に刻まれていくものと思います。

 また、今回の訪日で創価学会の皆様から受けた真心の熱烈歓迎に、心から感謝申し上げます。

 私たちは、山本会長をはじめとする創価学会の皆様の友情と好意を携えて帰り、それを中国人民に伝えてまいります」

 伸一は、団長の手を強く握り締めて言った。

 「ありがとうございます。感謝します。

 私たちが開いた日中友好の道を、やがて、何百万の青年が、喜々として往来していくでしょう。

 そのための私たちの交流です。現在の一歩一歩の歩みが、一回一回の語らいが、新しい日中の歴史を開いているんです。

 皆さんは先駆者です。今は実感できなくとも、後になればなるほど、その意味がよくわかるものです。

 どうか青年として、歴史を担う気概と誇りをもって進んでください」

 代表団のメンバーは、目を輝かせて頷いた。



引用文献:  注 セシリア・メイレレス著『カンチコス(讃歌)』モデルナ出版社(ポルトガル語版)