小説「新・人間革命」 人間外交19 3月24日

青年と語り合うことは爽快である。未来の大空に真っすぐに飛翔せんとする、一途な情熱が脈打っているからだ。

 山本伸一は、中国青年代表団のメンバーに、未来を託す思いで語った。

 「皆さんには、さらに堅固な友好の大道を開いていく使命があります。

 では、そのために何が必要か――。

 それは行動です。どんな立派な言葉よりも、実際に何をしたかです。勇気をもって行動していくことです。私も、そうしてきました。これからも、そうしていきます。

 共に日中両国の友好のために、走り抜こうではありませんか!」

 青年たちは、大きく頷いた。

 伸一は、彼らの胸に燃える決意の炎を感じた。

 和やかななかにも、友誼の誓いを固め合った語らいとなった。

 懇談を終えた伸一は、再び全員と握手を交わして、青年たちの成長を祈り、見送ったのである。

 伸一の仕事は、年々増えこそすれ、減ることはなかった。毎月の本部幹部会をはじめ、学会の各種会合や各大学会の総会への出席もあれば、各部の幹部との打ち合わせも頻繁にもたれていた。

 創立者として、創価大学創価学園、また、富士美術館や民音の催しなどにも足を運ばねばならなかった。

 そのなかで、時間を捻出し、各界の識者や指導者たちとの対話は、着実に続けられていった。

 三月の二十日には、関西の財界人たちと、さらに、東洋大学の磯村英一教授と会談した。

 二十四日には、イスラエルのシャウル・ラマティ駐日大使夫妻。

 二十五日には、ルーマニアのニコラエ・フィナンツー駐日大使。

 二十九日には、西ドイツ(当時)のボン大学名誉教授のゲルハルト・オルショビー博士に引き続き、ウガンダのS・T・ビゴンベ駐日臨時代理大使夫妻と会談している。

 対話には勇気と決断が大切である。まず、断じて語り合おうと心を定めて、懸命に時間をつくり出すのである。

 そして、対話が実現したら、恐れずに真実を語るのだ。それが、本当の友情を育んでいく。 

 「時代は勇敢な者、決断する者に味方します」(注)とは、シラーの記した真理の言葉である。



引用文献:  注 シラー著『ヴァレンシュタイン』海老澤君夫訳、溪水社