小説「新・人間革命」  4月5日 人間外交30

山本伸一は、学生たちの顔を見ると、親しみを込めて語りかけた。

 「また、お会いできて嬉しい。懐かしい人ばかりです」

 そして、皆と握手を交わしていった。

 すると、学生の一人が日本語で言った。

 「先生は、近ごろいかがですか」

 「おお、すばらしい! また一段と、日本語が上手になっています。努力しましたね。

 おかげさまで私は元気です。特に今日は皆さんとお会いできたので、元気いっぱいです」

 笑いが広がった。

 周恩来総理は、若き日に、こう訴えている。

 「われわれ青年には、今日があるばかりでなく、はてしない未来がある」(注)

 青年は次代を担う“人類の宝”である。青年との語らいは、未来と語り合うことだ。

 伸一は語った。

 「皆さんとの友情の絆を、私は、さらに太く強く、永続的なものにしていきたいのです。

 日中の若い世代が次々に交流していってこそ、本当の友好の金の橋となります。

 皆さんは、必ず日本に来てください。お待ちしています。

 中国に出発する前、私は、大阪にある創価女子学園を訪問しました。私が創立した学校です。

 そこの高校生、中学生たちも、ぜひ中国に行きたいと言っていました。

 そうした後に続く生徒たちが、また、皆さん方がいるからこそ、私には希望があるんです。勇気がわいてくるんです。

 皆さんのために、私はさらに道を開き続けます。全生命をかけます。

 さあ、希望の未来に、日中の新しい明日に、共々に出発しましょう!」

 皆の瞳が輝いた。

 この日の夜、伸一は、創価女子学園に電報を打った。

 「中国へ出発の時には、女子学園でお見送りをいただきありがとう。

 今日は北京大学に行きました。明日はまた忙しいと思います。

 たくましく、そして美しく成長してください。

 ではまた、わが娘たちへ。 北京にて 山本」

 伸一は、創価女子学園生、また、創価学園生、創価大学生のことが、常に頭から離れなかった。

 世界平和のバトンを託す後継者であると信じていたからだ。



引用文献: 注 高橋強・川崎高志著『周恩来――人民の宰相』第三文明社