小説「新・人間革命」 共鳴音33  6月26日

 欧州友好祭の舞台には鼓笛隊が登場し、太陽をイメージした装飾をバックに、若々しい躍動のリズムを奏でた。

 それに合わせて観客から手拍子が起こり、まさに、観客と出演者の合奏となった。

 パリといえばシャンソンである。その魅惑の歌声が流れ、バイオリン、ピアノの演奏が響いた。

 ベルギーのメンバーはモダンバレエ「愛のテーマ」で観客を魅了。

 そして、ヒゲの紳士が進行役になって進められた、イギリスのメンバーによるエリザベス朝風のダンスと、舞台は続いた。

 情熱と太陽の国スペインのメンバーはフラメンコを、西ドイツは「生きる喜び」と題してモダンバレエを披露。

 民族衣装に身を包み、ひときわ陽気なダンスで花を添えたのは、イタリアのメンバーだった。

 ダンスの最後に、舞台にいたメンバーが紙を掲げた。すると、日本語の「先生 お元気で!」の文字が並んだ。

 創作ダンスもあれば、チャールストンの踊りもあった。各国各地の個性の花が爛漫と咲き誇る、芸術と文化の薫り高い友好祭となった。

 山本伸一と峯子は、その一つ一つの熱演に対し、立ち上がって懸命に拍手を送った。

 そこには、ヨーロッパの未来を照らす、友情の結合という希望の縮図があった。

 ヨーロッパ統合の父・クーデンホーフ・カレルギー伯爵は語っている。

 「ヨーロッパ人は自分の運命に屈しないで、行動と精神によって運命を征服しようと努めている」(注)

 幾たびも繰り返されてきた、対立と戦争というヨーロッパの運命を転換する、その「行動」と「精神」の新しき源泉こそが、仏法という人間革命の哲理なのだ。

 フィナーレの後、ヨーロッパ会議議長の川崎鋭治があいさつした。

 「本日の友好祭は、ヨーロッパは一つであることを示す、大成功の舞台となりました。

 国境を超えて、山本先生のもと、私たちの心は結ばれ、友情の絆は一段と強まりました。

 この友情の輪を、さらにヨーロッパに広げ、人間共和の未来を築いていこうではありませんか。

 久遠からの友である皆様方に、心から御礼、感謝申し上げます」



引用文献: 注 『クーデンホーフ・カレルギー全集3』鹿島守之助訳、鹿島研究所出版会