小説「新・人間革命」共鳴音40 7月4日

続いて、イギリスの法人の理事長に就任した、レイモンド・ゴードンがあいさつした。

 長身で情熱にあふれたイギリス人である。SGI(創価学会インタナショナル)が発足したグアムでの世界平和会議で、経過報告を行ったのも彼であった。

 ゴードンは感無量の顔で、英語で語り始めた。

 「ここに山本先生をイギリスにお迎えすることができました!

 この喜びを、どう言葉に表せばよいのか、私は戸惑っております。

 私は、先生にはイギリスに、少しでも長く滞在していただきたい。しかし、世界の広宣流布のことを思うと、無理は言えません。今、こうして先生に、ここにいていただけるだけで、胸がいっぱいであります。

 今日から私たちは、先生を心にいだき、そのご指導通りに実践し、師弟の道を進んでまいります。なぜなら、それこそが、私たちの団結の要諦であるからです。

 人類の幸福と平和のために献身する師の心を受け継ぎ、師弟の道を歩んでいくことが、SGIの精神であると、私は確信しております。

 そして、この精神を世代から世代へ、いつまでも語り継いでいこうではありませんか!」

 大きな賛同の拍手が響いた。拍手がやむのを待って、彼は話を続けた。

 「また、私たちは、学会が試練に遭うなどの、“大変な時こそ頑張る”をモットーに、勇んで困難に挑み、勝利を築いていくことを、山本先生にお誓い申し上げます」

 伸一は、ゴードンの決意を聞いて感動を覚えた。信心の本質を鋭く的確にとらえた、英邁なイギリス人リーダーが誕生したことが嬉しかった。世界広宣流布の新しい曙光を見る思いがしたのである。

 ゴードンは、前年の三月にイギリスに戻るまで、日本にいたこともあり、伸一も彼のことはよく知っていた。

 彼は一九二〇年(大正九年)にロンドンで生まれ、王立陸軍士官学校を出て職業軍人となった。

 第二次世界大戦の時には、インパール作戦を展開した日本軍と、イギリス軍少佐として戦った。

 補給の計画もできていない、この無謀なインパール作戦で、十万人の日本兵のうち死傷者は七万人を超えたといわれる。