小説「新・人間革命」宝冠50 9月11日

プロコフィエフ教育相との会談で山本伸一は、同省との間で進んでいる教科書交流について語った。

 「各国の教科書が、他国の風俗などを、誤って伝えていることが少なくありません。

 たとえば、日本の場合も、昔の風俗が、現代の日本の姿として紹介されていることがよくあります。反対に日本の教科書も、各国のことを誤って紹介していることもあるのではないかと思います。

 したがって、国際教育の一環として、正しい相互理解を進めていくうえで、教科書の交換・交流は、極めて重要であると思います」

 教育相は笑顔で頷いた。

 「会長の意見に賛成です。政治的評価、イデオロギー的評価は、それぞれの見方で変わりますが、各国の風俗や、客観的に評価すべき事柄が、間違って伝えられるようなことがあってはなりません。

 したがってソ連は、フランス、フィンランド、イタリアと合同委員会を構成し、教科書の的確な記述をめざしています」

 さらに伸一は、国を超えて初等教育に従事する代表者の意見交換の場を設け、相互理解を促進し、教育の向上を図ることを提案した。

 また、国際的な人間を育成するうえで、何が大切かも話題になった。

 プロコフィエフ教育相は語った。

 「社会奉仕することを自分の最高の目的とし、理想とする人間を養成することです。社会に対する自己の使命の自覚は、やがて世界的意識を育んでいきます。これは、二十一世紀への、いや、二十五世紀へのテーマでもあります」

 社会への奉仕、つまり、利他という生き方の確立は、世界共通のテーマなのだ。

 仏法では、その生き方を菩薩道として教えている。皆が、法華経に説かれた、一切衆生を救う使命をもった「地涌の菩薩」であるとの自覚のもと、社会貢献に取り組んでいるのが、創価学会の運動である。世界の識者が模索する回答が、創価学会にあるのだ。