小説「新・人間革命」  4月11日 潮流65

ドミニカ共和国のゴイコ・モラレス副大統領は、笑顔で、山本伸一に語った。

 「ハワイとドミニカ共和国は、気候も風土もよく似ています。

 私はハワイのSGIメンバーの姿を見て、ドミニカの未来に自信をいだきました。人びとが希望に燃え、はつらつとしていくならば、どの国も発展するし、幸せな国になれるという原理を学んだからです。

 私どもは、山本会長の精神面でのアドバイスを求めています。一日も早く、ドミニカにいらしてください」

 語らいは尽きなかった。伸一は、副大統領夫妻らを、メンバーと共に盛大な拍手で送ったあと、メンバーの輪の中に入り、労をねぎらい、一人ひとりと握手を交わしていった。彼の全身から、汗が噴き出していた。

 「ありがとう! また、お会いしましょう」

 「君の成長を楽しみにしているよ」

 わが生命を吹き込む思いでの激励である。

 世界平和の潮流といっても、人間主義の旗を掲げ持つ、人材群が育つかどうかで決まってしまう。そのためには、一瞬一瞬の励ましこそが、勝負なのだ。

 皆を激励した伸一と峯子は、メンバーに送られ、車に乗った。会館の門のところに来ると、アロハシャツを着た日系人の青年が警備をしていた。

 伸一は、車を止めてもらい、窓を開けた。

 同乗していたアメリカの幹部が言った。

 「彼はバーナード・カワカミです。先生のハワイ初訪問の折、先生を訪ねて、両親と一緒にホテルに来ておりました。記念に袱紗もいただいています。当時はまだ、小学生でした。彼の姉は、ハワイの女子部長です」

 伸一は満面の笑みで、握手を交わした。

 「ありがとう。立派な指導者に育ってください。あなたの未来を見守っています」

 十五年前の苗木は今、緑茂る樹木に育ち、ハワイの大地に根を張っていたのだ。平和の新しき潮流が起ころうとしていたのである。

 (この章終わり)