小説「新・人間革命」  4月27日 波濤12

男子部長は、力強い声で語った。

 「いつの日か、山本先生を、必ずこの『波濤会』の集いにお迎えしたいと思います。

 その時こそ、本当の意味で、『波濤会』の結成であるととらえ、その日をめざして、勇猛果敢に前進していこう」

 賛同と決意の拍手が鳴り響いた。

 夏季講習会の指揮を執っていた山本伸一は、男子部長らから、「波濤会」結成大会の詳細な報告を受けた。

 伸一は、未来を思い描きながら語った。

 「これで一石が投じられた。まだ、小さな動きだが、ここから大波が広がっていくよ」

「波濤会」の結成は、機関紙である聖教新聞にも報じられ、また、船員のメンバーからメンバーへと、伝えられていった。

 その知らせは、大きな衝撃をもたらした。

 彼らは、普段、学会活動に参加できないことから、自分たちは、学会の“主役”にはなりえないと考え、寂しい思いをいだく人も少なくなかった。そして、何か“負い目”のようなものを感じていたのである。

 ところが、「波濤会」の結成によって、光が当てられ、その固有の使命が、明らかにされ、宣揚されたのだ。それは、勇気と希望の光源となったのである。

 船員のメンバーの多くが、自己の使命を自覚し、仕事に誇りをもった。そして、「波濤会」のメンバーになることを目標に、喜び勇んで信心に励むようになっていった。

 関東、関西では、船員座談会も活発に行われ、新しい参加者も増えていった。船内での仏法対話が実り、入会する人もいた。

 また、あるメンバーは、航海中は、学会から遠く離れてしまったような寂しさに襲われてきた。

しかし、「『波濤会』の一員となってからは、仏道修行の最前線にいるのだという自覚がもて、決意と勇気が、ふつふつとたぎっています」と言うのである。

 自分の一念が変わる時、自分のいる世界が変わる。それが仏法の変革の方程式である。