小説「新・人間革命」  12月23日 未来30

札幌創価幼稚園の園児たちは、入園二日目の帰りの時間を迎えた。山本伸一は、この日は、二コース、三コースを回るバスに乗って、園児たちを送ることにしていた。

 教員が、二コースのバスに乗る園児の、名前と顔を確認すると、女の子が一人いない。

 伸一が玄関を見に行くと、まごまごしている子どもがいた。二コースのバスに乗る園児であった。

 「さあ、みんなでバスに乗って帰ろうね」

 彼は、子どもの手を取ってバスに向かい、一緒に乗り込んだ。

 車中、伸一が、園児たちにマイクを回すと、次々と、童謡やテレビの子ども向け番組のテーマソングを歌い始めた。まるで、遠足のようである。伸一も共に口ずさんだ。

 クイズも出し合った。

 二コースを回って、幼稚園に戻ると、三コースの園児が乗り込んできた。伸一は、再び子どもたちと出発し、また、車内で交歓のひと時を過ごすのであった。

 この日は、乗降場所で、園児の名前を確認しながら降ろすのに手間取ったこともあり、バスはかなり遅れてしまった。三十分近くも待っていた母親もいた。

 伸一は、申し訳ない思いで、胸がいっぱいだった。バスの時間帯も、再検討する必要があるかもしれないと思った。

 彼は、降車した子どもたちを見送りながら、バスが止まる場所の交通量や、安全状況などを、詳細にチェックしていった。

 計画と現実との間には、さまざまな違いが生じるものである。だから、実際に行って、検証してみることが大事になるのだ。

 伸一自身、常に、そう努めてきた。机上の空論に基づいて計画が実行に移されれば、現実との大きな違いが生じ、混乱をもたらすことになる。場合によっては、事故にもつながりかねない。

 それだけに、細かな検証作業を繰り返し、現実に即して、計画を練り上げていくことが極めて重要になるのだ。