小説「新・人間革命」  1月18日 未来49

山本伸一が峯子と共に、シンガポール創価幼稚園を最初に訪れたのは、一九九五年(平成七年)の十一月であった。

 キラキラと瞳を輝かせる園児たちに、伸一は呼びかけた。

 「お父さん、お母さんを大切に! 幼稚園の先生を大切に! 兄弟姉妹を大切に! シンガポールの国を大切に!」

 「イェー!」という元気な声が、はね返る。

 「皆さんは、世界で活躍する人です。日本へも来てください。世界中に皆さんのお友だちがいます」

 彼は、“未来”との対話に余念がなかった。

 伸一と峯子は、二〇〇〇年(同十二年)の十一月にも、同幼稚園を訪問した。

  

  海のむこうの 希望の友よ

  静かにじっと 目をとじれば……

  

 その時、園児たちは、日本語の歌の合唱で伸一を迎えた。歌は、関西創価小学校の児童が作詞した「太平洋にかける虹」である。

 「日本語が上手だね。ありがとう!」

 伸一は、心から賞讃の拍手を送り、一人ひとりの手を握り、頬をなで、励ましていった。子どもたちの笑顔がまぶしかった。

 さらに、伸一は、園舎二階の鳳雛講堂の前で、「創価教育原点の碑」の除幕式に臨んだ。これは、「多民族共生の天地・シンガポールから創価教育を世界に広げゆく」との誓いを込めて設置されたものだ。

 伸一は、園長や教員らに訴えた。

 「シンガポール創価幼稚園は、世界市民をつくる、創価教育の原点です。その自負をもって、堂々と進んでください」

 ここには、民族を超えた、麗しき人間共和の縮図がある――その広がりが、未来の社会となるのだ。

 また、彼は、幼稚園にピアノを寄贈した。

 “なかなか訪問できないが、みんなと一緒だよ。共に平和の調べを奏でていこうね”との、思いを込めてのプレゼントであった。