小説「新・人間革命」  1月19日 未来50

シンガポール創価幼稚園は、開園以来、世界市民を育む語学教育、人間性を育む情操教育、パソコンなどの最新設備を駆使した先端教育が、社会の注目を浴びてきた。

シンガポール政府からは、「優れた教育プログラムと環境を有する“モデル幼稚園”」と認定されている。

 さらに、二〇〇七年(平成十九年)、シンガポール創価幼稚園の教員が、教育省の「幼児教育最優秀教師賞」に輝いている。

 一九九五年(同七年)四月には、マレーシア創価幼稚園の開園式が行われた。マレーシアも、多民族国家であり、同幼稚園も、世界市民の育成に力を注いできた。

マレー語、中国語(北京語)、英語の三つの言語の学習が、カリキュラムに盛り込まれている。

 園児が、各家庭で使っているのは、マレー語、中国語、英語、タミル語などである。

しかも、中国語は、北京語、福建語、広東語などに分かれる。それだけに、意思の疎通、相互理解のためには、語学教育が極めて重要であると考え、実施されたものだ。

 そして、三つの言語を習得するため、週ごとに、マレー語週、中国語週、英語週とし、言葉の習得だけでなく、文化も学んでいく。

 たとえば、マレー語週になると、体操の時間には、マレーの音楽に合わせ、マレーのダンスを踊る。また、マレーに伝わる物語などを聴くのである。

 世界市民を育むうえで大切なことは、ただ言葉を理解するだけではなく、人種、民族、文化の違いを知り、その差異を尊重することであるとの考えに基づくものだ。

 「教育計画のための構想は世界市民主義的に立てられなければならない」(注)とは、近代哲学の祖カントの言葉である。

 創価幼稚園の教育には、カントの主張の実現がある。

それは、二十一世紀は世界が一つになる「地球民族主義」の時代、人間共和の時代にしなければならないとの、明確なビジョンがあってこそ、成り立つといってよい。



引用文献:  注 「教育学」(『カント全集17』所収)加藤泰史訳、岩波書店