小説「新・人間革命」  1月20日 未来51

マレーシア創価幼稚園の、ある園児の母親は、子どもの問いに、驚きを覚えた。

 「お母さん、地球が病気になったら、どうやって地球を守ってあげればいい?」

 そして、母親は、幼稚園で、「地球も人間も同じ生命であり、すべてのものが、互いに関係し合って成り立っている」と、教えていることを知ったのだ。

それは、世界市民教育の基礎と言えよう。そこには、創立者山本伸一の哲学がある。

 ――人間は、自然の恩恵を受けて生きている。したがって、自然を大切にすることが、人間を守ることになる。また、人間は、一人では生きられない。だから、両親や先生、友だちなどに感謝し、大切にすることだ。

 そうした考え方が、マレーシア創価幼稚園では、子どもたちの心に育まれている。

 ゆえに、幼稚園の随所で、園児たちが互いに助け合い、励まし合う姿が見られる。

 「自立」と「思いやり」を育てることに、教員たちは力を注いでいるのだ。

 また、園児たちが、幼稚園生活のなかで、体験を通して、さまざまな物事を学べるように努力している。

 料理作りも、その一つである。園児が、包丁やガスレンジを使って、料理を作るのだ。そのための、子ども用の調理場がある。

 子どもたちは、料理の準備を通して、トマトやジャガイモ、タマネギなど、いろいろな食材を知る。

 さらに、「それが幾つ必要なのか」「スープには、水の分量はどのくらい必要か」などを学習していく。つまり、楽しみながら、算数も学んでいくのである。

 そして、包丁などを使い、実際に料理していくなかで、どうすれば安全で、どうなれば危険なのかを、体得していくのだ。

 さらに、その作業を通して、母親など、日々、料理を作ってくれる人への、感謝の思いも増していくのである。

 生活のなかで身につけたことは忘れない。それは、一生の土台となる。