小説「新・人間革命」  1月22日 未来53

創価教育の父である牧口常三郎初代会長の生誕百三十年に当たる二〇〇一年(平成十三年)六月、ブラジルのサンパウロで、ブラジル創価幼稚園の開園式が行われた。

札幌創価幼稚園の開園から二十五年後のことだ。

 ブラジルSGIでは、一九九四年(同六年)から、教育部が、牧口の「創価教育学」に基づく、教育プログラム「牧口プロジェクト」を推進してきた。

 これは、教育の目的は子どもを幸福にすることであるとの、牧口の教育哲学を実践するもので、子どもたちが、美・利・善という価値を創造していくための教育である。

 初等教育学校(日本の小・中学校に相当)で、この授業を受けた子どもたちは、学ぶことに喜びを見いだし、思いやりを身につけるなど、人格的にも大きな成長を遂げていった。

その教育実績を知り、「牧口プロジェクト」を取り入れる学校が広がり、百校ほどが実践校となっていった。

 その本格的な創価教育の場として、ブラジル創価幼稚園が誕生したのである。

 開園式には、創立者山本伸一もメッセージを送り、大きな期待を寄せた。

 同幼稚園では、子どもたちが興味をもてる、生活に即した作業を通して、総合的に、さまざまな事柄が学べるような、学習方法がとられていった。

 その一つが野菜作りである。子どもたちが土を耕し、種を蒔き、野菜を育て、収穫する。

 種を蒔く時に、教師は言う。

 「この小さな種の中に、実もあれば、花もある。あなたたちも、同じように、お母さんの中に、小さな生命として宿り、頭や手や足ができていったのよ。

そして、すべて小さなまま、赤ん坊として生まれ、それを、お母さんやお父さんが大事に育ててくれたの。

 野菜も、種からかわいがって、大切に土に入れ、水をやり、太陽の光で温めてあげれば、芽を出し、花を咲かせるわ」

 栽培の仕方だけでなく、生命の不思議さ、尊さを教えていくのである。