小説「新・人間革命」  1月23日 未来54

ブラジル創価幼稚園での野菜の栽培を通して、子どもたちは、野菜の名前や種類、それぞれの野菜には、どんな栄養があるかを学んでいく。また、野菜の生育を観察することで、長さなどの測定の仕方も学ぶ。

 野菜を収穫すると、サンドイッチなどを作る。そして、それを皆で食べる。

 こうした学習に、子どもたちは好奇心をみなぎらせ、目を輝かせて取り組む。また、野菜の栽培によって、皆が、好んで野菜を食べるようになるという。

 そして、自分たちが育てた野菜を、家族にも食べてもらう。その家族が喜ぶ姿から、人のために尽くす「善」の創造の、すばらしさを学んでいくのである。

 子どもたちに、単に知識を詰め込むのではなく、創造力を培い、善、慈悲の心を育む教育への、社会の関心は強く、評価は高い。

 ブラジルでは、幼稚園に続いて、初等教育学校も開校。ブラジル創価学園として、人間主義に基づいた一貫教育をめざしている。

 山本伸一は、折々に、幼稚園をはじめ、ブラジル創価学園にメッセージを送ってきた。まだ、訪問できないでいるだけに、彼の思いは、ことのほか深かった。

 かつて教員をしていた長男の正弘に、自分に代わって訪問し、みんなを励ましてくるように託したこともある。

 伸一の心は、常に、ブラジル創価学園の子らと共にあった。

 彼は、よく妻の峯子と語り合った。

 「日本とは、地球の反対側にあるブラジルで、創価の人間教育が行われ、社会の高い評価を得ている。創価教育の父・牧口先生も、きっと喜ばれているよ」

 「そうですね。本当に、すごい時代になりましたね。二十一世紀は、きっと、南米大陸から、平和を創造する、新しい人間主義の大潮流が起こりますね。楽しみですわ」

 教育は、時代を変え、世界を変える。

 “未来”は、燦然たる黄金の光を放ち始めたのである。