小説「新・人間革命」  1月28日 学光2

録音テープに吹き込まれた、山本伸一の力強い声が、創価大学の中央体育館に響いていった。

 「五月十六日は、重大な歴史の日となりました。晴れやかな開学式、まことにおめでとうございます。また、皆さんのご入学を心よりお祝い申し上げます」

 「重大な歴史の日」――皆、その言葉に、思わず息をのんだ。通教生たちは、伸一の言わんとすることの、深い意味を理解したわけではなかった。

しかし、誰もが、通信教育部に対する、伸一の、強く、熱い思いを感じながら、メッセージに耳をそばだてた。

 「通信教育部の設置は、創価大学設立の構想を練り始めて以来の、私の念願でありました。

 教育の門戸は、年齢、職業、居住地のいかんを問わず、すべての人びとに平等に開かれねばなりません。

まして、本学が“人間教育の最高学府”をめざす以上、教育の機会均等化を図るために、通信教育部をおくことは重要な課題であると考えてまいりました。

 今回、入学された皆さんは、年齢も幅広く、十代から七十歳を超える高齢の方々までいらっしゃるとうかがっております。

また、ほぼ全員が仕事をもち、会社員、公務員、主婦等々、多忙ななかで、学問の道を志されたと聞いております。私はそこに、創価教育の原点ともいうべき学問への姿勢を見る思いがしてなりません」

 そして、牧口常三郎が提唱した「半日学校制度」に言及。それは、学習の能率を図ることによって、学校生活を半日とし、あとの半日を生産的な実業生活にあてるという制度である。

牧口は、この制度の根本的な意義は、「学習を生活の準備とするのではなく、

生活をしながら学習する、実際生活をなしつつ学習生活をなすこと、即ち学習生活をなしつつ実際生活もすることであって、(中略)一生を通じ、修養に努めしめる様に仕向ける意味である」(注)と述べている。

 生涯が学習である。生涯が勉強である。それが、人間らしく生きるということなのだ。



引用文献:  注 「創価教育学体系(下)」(『牧口常三郎全集6』所収)第三文明社=現代表記に改めた。