小説「新・人間革命」  2月13日 学光15

通教生は、卒業に必要な百二十四単位(経済学部は百二十六単位)のうち、スクーリングで、約四分の一にあたる三十単位を修得する。

この単位はリポートでは修得できず、夏か秋のスクーリングに参加し、授業を受け、試験を受けなければならなかった。

第一回の夏期スクーリングは、八月十五日から二十九日までであった。十五日間、続けて参加することもできるし、前期(十五日~二十五日)、後期(二十五日~二十九日)のどちらかを選ぶこともできた。

また、九月から十一月にかけての日曜、祝日には、秋期スクーリングが開催されることになっていた。

夏と秋のスクーリングを組み合わせて、単位を修得することも可能であった。それでも、スクーリングに参加すること自体が、大変な“戦い”であった。

八月十五日、初の夏期スクーリングが開始された。全国各地から、通教生全体の三分の一を超える七百数十人が参加したのである。通学できない、遠方からの参加者のためには、学生寮なども用意されていた。

参加者のなかには、既に何通ものリポートを出している人もいたが、なかには、まだ、教科書さえ開けずにいる人もいた。それでも、向学意欲を燃やして集って来たのだ。

開講式とガイダンスを終え、午後から授業が始まった。

翌日からは、授業は午前九時開始となる。一コマ九十分で、学生たちの状況を考慮し、短期集中のスクーリングとなっているため、朝から夕方まで、ほとんど授業が詰まっていた。

教室の席は、先を争うようにして前から順に埋まっていった。

スクーリングは、直接、講義を聴くことができる貴重な時間である。職場や家族の理解と協力を得て、時間をつくり、費用を捻出して参加したのだ。決して無駄にするわけにはいかなかった。

厳しい条件のなかで挑戦する人は、真剣である。その真剣さが、自らを鍛え、強くし、大成への力となっていくのだ。ゆえに、苦境こそ、幸福の母となるのである。