小説「新・人間革命」  2月16日 学光17

山本伸一は、八月十七日、創価大学で行われた、婦人部の結成二十五周年を祝う集いに出席した。通信教育部の夏期スクーリング三日目のことである。

 彼は、会場の中央体育館に向かう途中、何人もの通教生の姿を目にした。

 側にいた幹部に語った。

 「スクーリングで通教生が全国から来ているんだね。みんなと会いたいな。明日は、私も、激励に行くよ」

 最も苦労して、学業に励もうとしている人たちである。伸一は、自分が夜学に通っていた時代が思い出され、皆の苦労が、わが事のように感じられるのであった。

 大変な状況のなかで頑張っている人を、全力で励まし抜く――それが、指導者の心でなければならない。

 この日の夜、伸一は、大学の構内を車で回った。学生寮の近くを通ると、各部屋には、煌々と明かりがともっていた。

 彼は、同行していた幹部に言った。

 「通教生は、みんな勉強しているんだね。夜食にパンと牛乳を届けるようにしよう。大至急、手配してくれないか」

 パンと牛乳がそろうと、大学の職員が寮に運んだ。そして、皆に、創立者が寮の周りを車で回ったことなどを伝えた。歓声が響いた。

 翌日、伸一は、通教生の激励に向かった。

 中央体育館の横にある階段教室のS二〇一教室では、経済学部の通教生が「保健体育」の授業を受けていた。

 すると、教壇の横のドアがパッと開いた。そこに、山本伸一の姿があった。

 “創立者だ! 山本先生だ! 私たちのために、わざわざ来てくださったんだ!”

 目を潤ませる人もいた。教室中に大拍手と歓呼の声が轟き渡った。

 伸一は、皆に一礼し、教授の許可を得ると、マイクを取った。

 「第一期の通教生である皆さんの、真剣な、そして、勤勉なる姿を拝見し、創立者として感激しております。喜んでおります」