小説「新・人間革命」  2月18日 学光19

「こっちにおいでよ」

 山本伸一は、校舎に向かって右側のブロンズ像の前に通教生の代表たちを呼んだ。鍛冶職人と天使の像で、その台座には、「労苦と使命の中にのみ 人生の価値は生まれる」との、伸一の言葉が刻まれている。

 働き学ぶ、通教生への指針として、この言葉を忘れないでほしいと思ったからだ。

 ブロンズ像の前で、伸一を囲み、立ったまま、語らいが始まった。

 彼は、一人ひとりに、どこから来たかを尋ねながら、ねぎらいの言葉をかけていった。

 全国各地から、向学の情をたぎらせ、創価大学のキャンパスにやって来た人たちである。生活と格闘しつつ、学び抜いていこうという、地に足の着いた強さが感じられた。

 伸一は、“頑張れ! 頑張れ!”と、心で叫ぶような気持ちで語った。

 「このメンバーを『通信使命会』としてはどうでしょうか。何事も、発展していくためには、核となる人たちが必要です。

 皆さんには、ぜひ、通教生の核となっていただきたい。そして、母校を愛し、母校を守り、発展させていってください。

 また、まず皆さんが、あらゆる困難を乗り越え、卒業される日を待っています」

 この夜、大学の寮に宿泊していた通教生たちは、語り合った。

 「まさか、創立者の山本先生が教室に来られるとは思わなかったですね。ぼくは、先生の話を聞いて、通教生として苦学することに、“先生と同じ道を歩んでいるんだ”という誇りを得ました」

 「そうだね。ぼくの場合、これまで、経済的に恵まれないために、通教生になったという思いが強くあった。

 しかし、今は、むしろ、ぼくたちこそが、創価教育を体現する使命を担っているんだと思えるようになった。もう闘志満々だ。必ず頑張って、四年で卒業してみせるよ」

 人間教育の本義は、一念を転換させ、自分の大いなる価値に目覚めさせることにある。