小説「新・人間革命」 2月20日 学光21

八月二十九日、夏期スクーリングは最終日を迎えた。正午過ぎ、中央体育館横のS二〇一教室で閉講式が行われた。

 山本伸一は、創価大学で通教生を激励した翌日の十九日には、九州を訪問。東京に戻ると、二十八日には、神奈川の県民ホールで開催された「'76神奈川県文化祭」に出席した。

そして、この二十九日の午後には、大学の中央体育館で行われる「昭和三年会」の記念の集いに出席することになっていたのである。

 「昭和三年会」は、伸一と同じ昭和三年(一九二八年)生まれのメンバーの代表によって結成されたグループである。

 伸一は、さらに、そのあと、埼玉県に移動し、大宮市民会館で開催される「'76埼玉県文化祭」を観賞する予定であった。

 彼は、スクーリングの閉講式には、ぜひ出席したいと思っていたが、来客もあり、スケジュールが立て込んでいるだけに難しかった。そこで、閉講式には、メッセージを託し、皆の奮闘を心から讃えたのである。

 「見事な充実したスクーリング、まことにご苦労様でした。ただ、ただ、ご苦労様と申し上げます。来年もまた、元気いっぱいの姿でご来校ください。私も心からお待ち申し上げております。では、皆さん、お元気で」

 伸一は、「昭和三年会」の記念の集いに出席するため、創価大学に向かう車中でも、通教生のことを考え続けた。

 "明日からは、また、それぞれが一人となり、働きながら、日々の生活と格闘しつつ、時間を割いて勉学に励む......。このスクーリングを通して、学業に勝利する、強い決意を固められただろうか......"

 午後二時過ぎ、伸一は、大学の文科系校舎前に到着した。玄関のブロンズ像の辺りに、帰途に就く通教生たちの姿があった。

 伸一は、急いで車を降りた。

 "直接、会って励まそう! 今しかない"

 瞬時を逃すな。時は再び巡りくると思うな――それが、「臨終只今」の決意に生きる、彼の行動哲学であった。