小説「新・人間革命」  2月22日 学光22

閉講式を終えた通教生たちは、すぐにはキャンパスを離れがたく、ブロンズ像の前などで、親しくなった人と写真を撮ったり、連絡先を記したメモなどを交換したりしていた。

 そこに、山本伸一が現れたのである。

 「みんな、ご苦労様! 一緒に記念撮影をしようよ」

 歓声があがった。

 居合わせた教員も加わり、ブロンズ像をバックにカメラに納まった。

 伸一は、空を見上げて言った。

 「青空閉講式になったね」

 彼の言葉に、教員も、学生も、ニッコリと笑顔で頷いた。

 伸一は、メンバーと、次々に握手を交わしていった。

 「何があっても、負けないで!」

 「あなたが卒業証書を手にする日を、楽しみに待っています」

 そして、決意をかみしめるように語った。

 「私も勉強します。これから、さらに、世界の学者や指導者と、人類の未来のために、対談を重ねていきます。学ぼう。学びに学んでいこうよ」

 伸一の言葉に、通教生たちは粛然とした。その炎のような向学心に、感嘆したのだ。

 札幌農学校で初代教頭として教育に当たったクラーク博士は、農学校を去る時、見送りに来た学生たちに、「Boys, be ambitious」(青年よ、大志を抱け)との、有名な言葉を残している。

 クラーク博士の教え子で、札幌農学校の教授も務めた大島正健によれば、クラーク博士は、その言葉に続いて、「like this old man」(この老人のように)と語ったという。

「この老人」とは、博士自身である。つまり“自分のように、君たちは大志を抱くのだ!”と叫んだのである。

 真の人間教育とは、生き方を通しての、人格的触発によってなされるものだ。

 ゆえに伸一は、常に新しき前進と向上と挑戦を、自らに課し続けていたのである。