小説「新・人間革命」  2月23日 学光23

通教生たちにとってスクーリングの大きな収穫の一つが、全国各地の学友を知ったことであった。

 連絡先を交換し合い、その後、手紙や電話で励まし合う人たちもいた。近くに住む人たち同士が、一緒に勉強するようになったケースもあった。

 当初、通教生の多くが、一人で教科書を読んで学習し、リポートを書き、試験を受けねばならない通信教育を全うするのは、無理なのではないかと、思い悩んでいた。

 しかし、スクーリングでの、懇切丁寧な講義で理解を深め、さらに、友を得たことから、皆、自信と希望をもって、勉学に取り組むことができた。

 トルストイは、次のように記している。

 「人間は他人との交流がなくては、また他人からの働きかけと他人への働きかけがなくては自己を完成することはできないのである」(注)

 友情という絆を結ぶなかで、個人のもつ勇気が、力が、発揮されるのである。

 九月から十一月までは、日曜などの休日に行われる秋期スクーリングが実施された。

 まとまって休みが取れず、夏期スクーリングに参加できない人たちも、このスクーリングで単位を修得することができる。

 授業の開始は、午前九時である。未明に起き、二時間、三時間がかりで通って来る人もいた。

また、月曜から土曜まで働き、夜行列車や夜行バス等を使って、地方から来る人もいた。蓄積する疲労に音をあげたくなることもあったが、同じ境遇で頑張る学友との出会いが力となった。

 十月三日には、初の秋期試験が行われた。

 学生の便宜を図り、東京の創価大学をはじめ、北海道、宮城、愛知、大阪、広島、福岡など、全国十八会場で実施された。

 どの会場も、試験に挑む通教生たちの表情は、真剣そのものであった。学び、挑戦する人は美しい。向上心には高貴さがある。



引用文献:  注 トルストイ著『ことばの日めくり』小沼文彦訳、女子パウロ