小説「新・人間革命」  2月24日 学光24

 十月十日の日曜日――この日もスクーリングが行われ、各地から創価大学に集って来た通教生が、真剣に学んでいた。

 山本伸一は、午後から大学を訪れ、女子部の代表の研修会に出席していたが、通教生が集っていることを聞くと、授業終了後、一緒に記念撮影をするよう提案した。

 彼は、創立者として、わずかな時間でも、触れ合いと励ましの場をもちたかったのだ。

 記念撮影は、大学構内の松風合宿所の階段を使って行われた。

 伸一は、皆に呼びかけた。

 「どうか、体を大事にしてください。

 皆さんが、卒業されることが、私は一番嬉しいけれども、大切なことは、どれだけ頑張って勉強できたかなんです。学べば、その分だけ、自分の財産になります。

 私は、皆さんの努力に対して、陰ながら一生懸命に応援してまいります。お元気で!」

 彼は、そのあと、通信教育を担当している教職員たちにイスを勧め、懇談した。

 伸一は、懇願する思いで語った。

 「通教生は、わが大学の誇りであり、宝です。みんな、苦労しながら学んでいる。立派です。そうした人たちのなかから、ダイヤモンドのような逸材が出てくるんです。どうか、先生方は、一人ひとりを、心から大切にしていただきたい」

 試練に身をさらし、生命を磨いてこそ、人は光り輝いていく。したがって、見方を変えるならば、通教生こそ、自らを輝かせる最高の環境にいるといってもよい。

 語り合った十人ほどの教職員のなかに、ひときわ大きく頷く、黒縁のメガネをかけた青年がいた。この年の春に、通信教育部のインストラクター(添削指導員)として採用された佐江一志である。

 彼は、理容師をしながら、定時制高校、大学の通信教育部、二部(夜間部)に学び、大学院の修士・博士課程に進んだ青年であった。

 それだけに、伸一の思いがよくわかった。その心が、痛いほど胸に響くのである。