小説「新・人間革命」  3月18日 学光43

全国通教生大会に集った人たちには、青年もいれば、壮年や婦人もいた。なかには、七十歳を超えていると思われる白髪の老婦人の姿もあった。まさに老若男女が集っていた。
また、職業も、出身地も、千差万別である。
 しかし、それぞれが置かれた状況のなかで苦闘し、必死に学ぼうとしていることは、皆に共通していた。
 山本伸一は、深い敬意を込め、参加者に視線を注ぎながら話を続けた。
 「皆さんもご存じのように、私も夜学で学びました。夜学であれ、通信教育であれ、そうしたなかから偉大な人が、力ある社会貢献の人材が出てこそ、本当の教育革命です。
また、そこに人間革命の姿があるといえます。
 民主主義の世の中ですから、万人に、学ぶ権利がある。ましてや、懸命に働いている人には、教育を受ける最大の権利がある。
 その権利を、胸を張って行使し、無名であっても、地道に、懸命に学びゆく人たちのなかから、民衆に幸福と希望の光を送る先覚者が出なければならない。私は、その人こそが、皆さん方であると思います」
 また、伸一は、会場の年配者に呼びかけるように語っていった。
 「大変ななか、卒業できれば、皆さんも幸せであろうし、私も一番嬉しい。しかし、卒業だけに、とらわれる必要はありません。
 この創価大学通信教育部で学んだということは、自分自身の胸中に、輝く青春、輝く勉学、輝く努力の歴史を刻み、輝く先覚者としての道を歩んだということであります。
その誇りをもつならば、学んだ事柄は昇華され、偉大な人生の価値を創造することを知っていただきたいし、自信をもっていただきたい。
 大事なことは、前に向かい、光に向かい、向上のための努力をし続けた人が、真実の価値を創造することができるということです。また、そこに幸福があることを忘れないでください」
 皆が人生の勝利者に、皆が幸福博士に――というのが、伸一の心からの願いであった。