小説「新・人間革命」  4月13日 勇気10

二部学生に対する社会の評価は、決して昼間部の学生と同等とは言えなかった。昼間部の受験に失敗し、二部に入る学生も増えつつあったことから、学力を疑問視する声もあった。
就職についても、事実上、二部学生を採用枠から外している企業も少なくなかった。二部に学ぶ学生部員も、その現実に、いやというほど直面してきた。
 学会にあっては、すべて平等であった。しかし、社会的な評価を考え、内心、寂しい思いをしているメンバーもいた。
 夜間部に学んだ山本伸一は、二部学生の置かれた状況も、心情も、よくわかっていた。
 伸一が、仏法を根底にした人間学の眼でとらえた二部学生は、社会の見方とは、全く異なっていた。
二部学生こそ、学会の先駆である学生部のなかでも、最も期待すべき存在であるというのが、彼の認識であり、評価であった。その真実の思いを、伸一は、二部学生大会のメッセージに記したのだ。
 二部に学ぶ学生部員こそ、広宣流布のリーダーとして、最も重要な資質を備えている。それは、働き学ぶなかで、いかなる困難にあっても、自身のいだいた目標を貫徹する「強い意志力と忍耐力」を、日々、磨いているからだ。
 最も苦労した人こそ、最も成長を遂げる。過酷な「宿命」を背負った人こそ、最高の「使命」を担っている人である――これが、仏法の原理であり、伸一の信念であった。
 伸一は、彼らが、真の師弟として、広宣流布の使命を成し遂げる永遠の軌道を築くために、「飛翔会」の結成を提案したのである。
 藤森敦は、学生部員として、はつらつと学会活動に取り組んでいたが、二部学生ゆえの辛酸もなめてきた。
しかし、山本会長のメッセージと「飛翔会」の結成が、彼の一念を、人生観を、一変させ、悲哀の雲を一掃していったのである。
 「人間は、本来の使命に目覚めたとき、あらゆる悩みを解決できます」(注)とは、文豪トルストイの達見であった。
 
引用文献:  注 『レフ・トルストイ全集第78巻』テラ出版社(ロシア