小説「新・人間革命」 4月20日 勇気16

 正義の言論は、時代創造の力だ。
 一九七六年(昭和五十一年)五月十六日の夜、「勤労学生主張大会」が、教授などの大学教員、学友、職場の上司や同僚らを招いて、東京・江東公会堂で行われた。
 最初に、創作劇「明日に駆ける」が上演された。新聞販売店で働く、栃木県出身の二部学生をモデルにした演劇である。
 主人公が五歳の時、電器工場の管理責任者を務める父親が出奔。母親が農協の事務と河川工事をして働き、子どもたちを育てた。
彼は長男で、妹と弟がいる。生活は苦しく、父親が失踪した一家への世間の目は冷たかった。
 彼が小学校三年の時、一家は入会した。
 しかし、彼の心は、すさむ一方だった。中学時代は勉強もせず、喧嘩に明け暮れた。
 母親は、台風の夜、濁流の渦巻く河川の工事現場へ働きに出かけた。普段の三倍の日当がもらえるからだ。母の身を案じ、彼は、自ら仏壇に向かった。
 中学卒業後は、電器工場に勤め、定時制高校に通った。学会活動にも参加するようになった。
学会の先輩と共に、会長・山本伸一の指導も学んだ。彼を奮い立たせたのは、山本会長の、諸君は「学会の宝」「未来の指導者」との言葉であり、「じっとこらえて今にみろの決意を忘れず」との激励であった。
 彼は、自分も、広宣流布の使命に生き抜こうと決意する。また、大学へも進もうと思う。
 定時制高校を卒業したあと、東京に出て新聞販売店に住み込み、二部の大学に入学した。
 職場の同僚の多くは、将来に希望がもてず、自信を失いかけていた。自殺を考えている人もいた。彼は放っておけなかった。
仏法対話を始めた。青年の使命を訴え、皆を励ましていった。そして、同僚十一人のうち、九人までが信心を始めたのである。
 真の友情とは、友の幸せを願う心であり、必然的に、仏法という根本の幸福道を教えることに帰着していくのである。
 主人公は、希望の明日に向かって、誇らかに胸を張り、喜々として苦闘の青春を生きる。