小説「新・人間革命」 4月21日 勇気17

創作劇のあと、「勤労学生の使命と自覚」「私にとっての反戦運動」などのテーマで、五人が登壇し、力強く主張を語った。
 全国に吹き荒れた学生運動の嵐は、社会の矛盾、不合理を暴き出していったが、武力化した闘争は、あえなく鎮圧された。
 過激化したセクトは分裂を重ね、内ゲバを繰り返し、学生からも、社会からも、大きく遊離していった。そして、学生社会には、しらけ現象が蔓延していた。
 それは、生命の哲理をもたず、変革の主体である人間自身の革命が欠落した運動の、必然的な帰結でもあった。
 そこで、二部に学ぶ学生部員は、一切の原点である人間自身の変革、人間革命を機軸にした社会の建設という、新たな創造の叫びを、今こそ放とうとしたのである。
 その心意気を示すかのように、壇上の後方には、図案化された「創造」の文字が掲げられていた。
 「勤労学生の使命と自覚」と題して、主張を発表した青年は訴えた。
 ――二部学生への社会の評価は厳しく、職場にあっても、最前線の労働者であることが多い。
勤労学生として、仕事と学業を両立させることは大変だが、その環境は、見方を変えれば、人間錬磨の最高の道場といえる。また、社会の底辺に生きる人びとの実情や心を、誰よりもよく知ることができる。
 その二部学生が力をつけ、優れた知識と人間性を育み、社会の指導者に成長していってこそ、民衆を守る社会の建設が可能となる。それが、私たちの使命である――。
 逆境に最大の意義を見いだす逆転の発想だ。そこに、仏法の視座がある。
 最後に、彼は叫んだ。
 「その時、社会の二部学生に対する認識も大きく変わることは明らかです。自己の環境を開くのは、私たち自身の戦いです!」
 社会建設の主体者としての自覚に立つ人には、悲哀も、愚痴も、文句もない。あるのは、燃え立つばかりの情熱と挑戦の気概である。