小説「新・人間革命」 5月 4日 勇気28

共感することによって、行動するのが人間である。ゆえに、リーダーが臆し、ずる賢くなって、率先して行動せずに、皆を動かそうとしても、動いてくれるわけがない。
 すると、リーダーは焦りを感じて、その言動は、ともすれば、威圧的、命令的になっていく。そして、組織は、重く、暗くなり、人心は、ますます離れてしまうことになる。
 それに対して、率先垂範のリーダーは、自らの行動を通して人に触発を与え、人びとのやる気を引き出し、皆の自主性、自発性を呼び覚ましていく。
ゆえに、その組織は、明るく、歓喜にあふれ、上昇気流に乗るように、勝利への流れがつくられていくのだ。
 また、山本伸一は、戸田城聖こそ、広宣流布に、ただ一人立ち上がった、われらの師であり、この大阪、関西から、いや、日本、世界から、不幸に泣く人をなくしたいというのが、戸田の誓いであることを語り抜いた。
 そして、こう訴えたのである。
 「その戸田先生の心を、わが心として、先生に代わって戦おうではないですか!
 そうすることによって、私たちは、広宣流布の闘将である先生に直結していくことができる。そこに力がわくんです。
 先生を思えば、勇気がわきます。自分が鼓舞されます。
どうか、常に戸田先生を心に思い描いて、先生は、じっと見ていてくださる”“先生なら、どうされるかと、日々、己心の師匠と対話しながら、戦っていこうではありませんか!」
 広宣流布の戦いを進めるうえで、仏法の師と心を合わせていくことこそが、団結の根本である。そこに勝利への前進がある。
 自転車も、車軸にスポークがしっかりと繋がってこそ、車輪の回転がある。この車軸の存在が師匠にあたるといってよい。
 伸一の指揮のもと、関西は、怒濤の大前進を開始した。三月には、大阪支部が五千五世帯、堺支部が七百五十九世帯の弘教を達成。さらに四月、大阪支部は九千二世帯、堺支部は一千百十一世帯の成果を収めた。