小説「新・人間革命」 5月 5日 勇気29

戸田城聖の会長就任五周年となる、一九五六年(昭和三十一年)の五月には、遂に関西は、大阪支部一万一千百十一世帯、堺支部一千五百十五世帯という弘教を成し遂げた。
 「戸田先生は折伏の師匠である。なれば、弟子として弘教をもって、会長就任五周年をお祝いしよう」との山本伸一の思いを、関西の同志は皆が、共有していたのだ。
 関西二支部の弘教は、全国の四四パーセントを占めていた。まさに、未聞の快挙であり、不滅の金字塔が打ち立てられたのだ。関西に、美事なる広宣流布の大城が築かれたのだ。
 この年の七月には、第四回参議院議員選挙が行われた。
創価学会は、前年四月の統一地方選挙に、初めて候補者を推薦したのに続いて、参院選挙にも、地方区の東京と大阪に一人ずつ、また、全国区に四人の候補者を推薦したのである。
 日蓮仏法は、「立正安国」の宗教である。
 「立正」(正を立てる)とは、正法すなわち、慈悲と生命尊厳の仏法哲理を、社会建設の主体者である、一人ひとりの人間の胸中に打ち立てることである。
「安国」(国を安んずる)とは、その「立正」の帰結として、社会の平和と繁栄を築いていくことである。
 いわば、「立正」という、仏法者の宗教的使命の遂行は、「安国」という、仏法者の社会的使命の成就によって、完結するといえよう。
 社会の平和、繁栄なくしては個人の幸福もない。ゆえに、日蓮大聖人は仰せである。
 「一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を■<示すへんに壽>らん者か」(御書三一ページ)
 「四表の静謐」とは、社会の太平であり、広くは、世界の平和、繁栄である。
 宗教は、決して宗教のための宗教にとどまってはならない。「安国」という、社会の平和と繁栄を実現してこそ、民衆の救済という宗教本来の使命を全うすることができ、人間のための宗教たり得るのだ。
この立正安国の使命を果たすために、創価学会は社会の建設に立ち上がったのだ。