小説「新・人間革命」 5月 5日 勇気29
戸田城聖の会長就任五周年となる、一九五六年(昭和三十一年)の五月には、遂に関西は、大阪支部一万一千百十一世帯、堺支部一千五百十五世帯という弘教を成し遂げた。
この年の七月には、第四回参議院議員選挙が行われた。
日蓮仏法は、「立正安国」の宗教である。
「立正」(正を立てる)とは、正法すなわち、慈悲と生命尊厳の仏法哲理を、社会建設の主体者である、一人ひとりの人間の胸中に打ち立てることである。
「安国」(国を安んずる)とは、その「立正」の帰結として、社会の平和と繁栄を築いていくことである。
いわば、「立正」という、仏法者の宗教的使命の遂行は、「安国」という、仏法者の社会的使命の成就によって、完結するといえよう。
社会の平和、繁栄なくしては個人の幸福もない。ゆえに、日蓮大聖人は仰せである。
「一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を■<示すへんに壽>らん者か」(御書三一ページ)
「四表の静謐」とは、社会の太平であり、広くは、世界の平和、繁栄である。
宗教は、決して宗教のための宗教にとどまってはならない。「安国」という、社会の平和と繁栄を実現してこそ、民衆の救済という宗教本来の使命を全うすることができ、人間のための宗教たり得るのだ。
この立正安国の使命を果たすために、創価学会は社会の建設に立ち上がったのだ。