小説「新・人間革命」 5月 3日 勇気38

「新しい学会歌が必要だ。タイトルは『人間革命の歌』にしよう」
 七月一日、東京・上野の美術館で開催されている「第三文明展」に向かう車中、山本伸一は、同乗していた二人の幹部に語った。
 二人は、「はあ」と答えたものの、キョトンとした顔をしている。
 彼らは、この時、伸一が、なぜ、「人間革命の歌」という新しい学会歌を作ろうと思ったのか、理解しかねていた。
ちょうど、六月の十九日から、映画「続・人間革命」が上映されていたことから、それにちなんで、歌を作るのかと思ったりもした。
 伸一は、新しい歌を作ろうと考えた時、既に、タイトルは「人間革命の歌」にしようと決めていた。それ以外にはないと思った。
 それぞれの幸福境涯の確立も、家庭革命も、社会の建設も、世界平和の創造も、すべては人間革命から始まるからだ。
 そして、その人間の変革を推進している、唯一無二の団体が創価学会である。まさに創価学会は「人間革命の宗教」であるからだ。
 しかし、二人の幹部は、歌の意義を考えるよりも、歌は誰が作るのだろう。制作委員会をスタートさせ、準備に当たれということなのか等と、思案を巡らせていたのである。
 すると、伸一が言葉をついだ。
 「歌詞は『君も立て 我も立つ……』から始めようと思う。この二、三日、いろいろ考えて、イメージは、ほぼ出来ているんだ。
 今夜は、戸田先生ゆかりの方々と、先生が出獄された『7・3』を記念する集いがあり、明日は、東京の同志の代表と『恩師をしのぶ会』を行う。そして、明後日は、学会本部で、先生の出獄記念勤行会だ。
 私は、戸田先生を偲び、心で対話しながら、師弟の共戦譜となる『人間革命の歌』の制作に取り組もうと思っているんだよ。
 今年の後半からは、この歌を、皆で声高らかに歌って、誇らかに前進していくんだ」
 広宣流布の歩みは、学会歌の調べとともにある。躍動する生命の歌声とともにあるのだ。