小説「新・人間革命」 母の詩 39 11月17日
「母」の歌にまつわる逸話は尽きない。
短大生が尋ねた。
「模範とされるのは、どなたでしょうか」
即座に、答えが返ってきた。
「母です。母は、強い意志をもって自分の尊厳を守ることを、教えてくれたからです」
懇談のあと、短大生たちは、感謝の気持ちを込めて、「母」を合唱した。パークスには、英訳した歌詞が渡されていた。
彼女は、感動した面持ちで歌に聴き入っていた。その目が涙で潤んだ。
この時、パークスは、あの時の女子学生たちと会うことを希望していた。「母」の合唱が忘れられなかったのであろう。
また、二〇〇六年(同十八年)七月、中華全国青年連合会(全青連)の招聘を受けて、青年部の訪中団が上海を訪問した折、歓迎宴で、全青連のメンバーが提案した。
「『母』の歌を歌いましょう」
彼らも、この歌が好きなのだという。
自身も三児の母。彼女の父親は、九人の子どもを残して、若くして亡くなった。しかし、母親は、子どもを全員、大学で学ばせてくれた。学長は、感動をかみしめて語った。
「魂を揺さぶられました。『母』に歌われている心は世界共通です」