2010-11-21から1日間の記事一覧

小説「新・人間革命」 母の詩 40 11月18日

「母性は本来の教育者であり、未来に於ける理想社会の建設者」(注1)とは、創価の父・牧口常三郎初代会長の言葉である。 トルストイは「母親のこころは、――それは地上における神性の驚くべき至高の現われです」(注2)と語り、オーストラリアの詩人ジェフ…

小説「新・人間革命」 母の詩 39 11月17日

「母」の歌にまつわる逸話は尽きない。 一九九二年(平成四年)十二月、創価大学のロサンゼルス・キャンパス(当時)で、語学研修中の創価女子短大生が、米国の人権運動の母ローザ・パークスと懇談する機会を得た。 短大生が尋ねた。 「模範とされるのは、ど…

小説「新・人間革命」 母の詩 38 11月16日

山本伸一は、ソニア夫人に懸命に訴えた。 「運命を価値に転換してください。その人が人間としての勝利者です。王者です。 ソニア夫人が悲しめば、亡きご主人も悲しまれるでしょう。夫人が笑顔で立ち上がれば、ご主人も喜ばれるでしょう。夫人とご一家の勝利…

小説「新・人間革命」 母の詩37  2010年 11月13日

山本伸一は、八月六日、鹿児島の九州総合研修所(現在の二十一世紀自然研修道場)での諸行事に出席するため、東京を発った。 出発の前に、彼は、母・幸のもとに、「母」の歌のテープを届けてもらった。 母の容体は、幸いにも小康状態が続いていた。そして、…

小説「新・人間革命」 母の詩 36 11月12日

植村真澄美と松山真喜子は、「もう少し、歌いやすい曲に」という山本伸一の思いに応えようと、苦心を重ね、曲を作り直した。 彼女たちは、ようやく出来上がった「母」の歌をテープに吹き込み、八月四日の夕刻に本部に届けた。その夜、伸一は、妻の峯子とテー…

小説「新・人間革命」 母の詩 35 11月11日

七月十八日、「人間革命の歌」が完成した時、山本伸一は、植村真澄美と松山真喜子に言った。 「あなたたちに、頼みたいことがある。私の作った『母』の詩に、曲をつけてもらえないだろうか。 もちろん、自由詩だから、そのまま、曲をつけるのは難しいと思う…

小説「新・人間革命」 母の詩 34 11月10日

山本伸一は、子に愛を注ぐ母という存在は、戦争に人を駆り立てる者との対極にあり、「平和の体現者」であると見ていた。 彼は、詩「母」のなかで詠んだ。 「だが母なる哲人は叫ぶ―― 人間よ 静かに深く考えてもらいたい あなたたちの後ろにも あなたたちの成…

小説「新・人間革命」 母の詩 33 11月9日

七月十四日、山本伸一に代わって、妻の峯子が、長男の正弘、次男の久弘、三男の弘高と共に、母の幸を見舞った。正弘は二十三歳、久弘は二十一歳、弘高は十八歳になっていた。 「おばあちゃん、早く元気になってよ」 三人が、次々にこう言って、手を握り締め…

小説「新・人間革命」 母の詩 32 11月8日

山本伸一は、母は危篤状態を脱したとはいえ、余命いくばくもないと感じていた。 ゆえに、彼は、この機会に、仏法で説く死生観を、語っておきたかったのである。 「お母さん。また、大聖人は、信心し抜いた人は、『い(生)きてをはしき時は生の仏・今は死の…