小説「新・人間革命」 母の詩 40 11月18日

「母性は本来の教育者であり、未来に於ける理想社会の建設者」(注1)とは、創価の父・牧口常三郎初代会長の言葉である。
 トルストイは「母親のこころは、――それは地上における神性の驚くべき至高の現われです」(注2)と語り、オーストラリアの詩人ジェフリー・ペイジは「母たちの生きた一日また一日を、一夜また一夜を、私は讃える。
来る年も来る年も、『不屈』の二字に彩られた、苦しくも実り豊かな母たちの人生を、私は讃える」(注3)と歌う。
 母性、母親への讃辞は、時には自分を犠牲にしてまで子どもを守り、生命を育もうとする愛の、強さと力への賞讃である。
 「開目抄」には、激流に流されても、幼子を抱き締めて、絶対に離さなかった母の譬えが引かれている。子を思う慈念の功徳によって、母は梵天に生じたと説かれる。
 大聖人は、人間の一念の在り方を、この母の慈念を手本として示されたのである。
 母は、子どもにとって最初の教師であり、生涯の教師でもある。それゆえ、母が、確固たる人生の根本の思想と哲学をもつことが、どれほど人間教育の力となるか。
人間完成へと向かう母の不断の努力が、どれほど社会に価値を創造するか。母が、境涯を高め、聡明さを身につけていった時、母性は、崇高なる人間性の宝石として永遠なる光を放つのだ。
 「母」の歌の三番には、まさに、その山本伸一の願いが託されていた。
 
 三、母よ あなたの
   思想と聡明さで 春を願う
   地球の上に
   平安の楽符を 奏でてほしい
   その時 あなたは
   人間世紀の母として 生きる
  
 ひまわりのごとき母の微笑は、平和の象徴といえよう。女性を、一家の、社会の、人類の太陽として輝かせるために、創価学会という人間教育、女性教育の学びの園があるのだ。
 
■引用文献:
 注1 「創価教育学体系(下)」(『牧口常三郎全集6』所収)第三文明社
 注2 ビリューコフ著『大トルストイI』原久一郎訳、勁草書房
 注3 ペイジ著「不屈の魂」(『オーストラリアの詩選集』所収)ニューサウスウェールズ