小説「新・人間革命」 厳護 24 1月7日

山本伸一は、記念撮影のあとも、「創価班」のメンバーに語った。
 「青年が成長していくには、甘えを捨てなくてはだめだ。
責任は、壮年がもてばよいのだとか、仕事が忙しいから、学会活動がおろそかになっても仕方がないなどという考えが微塵でもあれば、自分を鍛えることはできない。
 青年には、責任は、すべて私がもちます。なんでもやらせてくださいという、体当たりでぶつかっていく、積極果敢な姿勢が必要なんです。
 また、どんなに仕事が忙しくとも、学会活動をやり抜いていくことが大事です。投げ出したり、時間的にも無理だなどとあきらめてしまったら、そこで、成長は止まってしまい、人間完成はありません。
 青年時代は、職場などでも下積みの仕事を余儀なくされていたり、最前線の労働に追われることが多いと思う。自由な時間なんか、ほとんどないでしょう。
 しかし、そのなかで、工夫に工夫を重ね、懸命に努力し、泣くような思いで、信心に励んでいくことです。
 その体験を積むなかに、鍛えがあり、困難に立ち向かう生命の基礎体力ともいうべき力が培われていく。さらに、それが、自身の福運になっていくんです。だから、苦労は、人生の最高の財産なんです。
 困難を避けて通るような生き方を身につけてしまったら、人生は不幸です」
 それから、伸一は、「人間革命の歌」の碑を指差して言った。
 「ここに、『吹雪に胸はり いざや征け』とあるが、君たちは、生涯、この精神でいくんだ。学会を頼むよ。広宣流布を頼むよ。二十一世紀を頼むよ」
 十九世紀のブラジルの作家アレンカールも、「人間が生き生きと、魂から湧き出るエネルギーをもって、目標のために、執念をもって実践すれば、すべての困難に打ち勝つのだ」(注)と記している。
 
■引用文献 アレンカールの言葉は、フォルコ・マスッチ編『思想辞書』レイア出版(ポルトガル語