小説「新・人間革命」 厳護 31 1月15日

 山本伸一は、現代社会の状況に言及し、世相はすさみ、「末法極まれり」との様相を呈していることを指摘した。
 この前年の二月には、アメリカのロッキード社による、航空機売り込みをめぐる疑獄事件が発覚している。
いわゆる、ロッキード事件である。日本の政治家らにも、巨額の賄賂が渡されていることが明らかになり、七月には、田中角栄前首相が逮捕されたのだ。
 政界、財界を中心に激震が走り、国民の政治不信は、ますます深まっていった。
 伸一は、力説した。
 「正邪、善悪の基準さえもあいまいとなり、人間の進むべき道が見失われてしまっているのが現代であります。未来に光を見いだすことができない時代となってしまった。
 今や、社会に希望なく、前途を明るくするものも、何一つないといってよい。
 そのなかにあって、創価学会は、世界の民衆に、人間の進むべき針路を示す黄金の灯台となってきたし、ますます学会の役割は、重大になっております。
 『創価班』は、その学会の希望の灯であり、創価であります。まさに、諸君こそが、学会という灯台の光源であることを忘れないでいただきたい。
 混迷する時代のなかで、学会は、正義の旗を高らかに掲げ、民衆の幸せのために走り続けてきました。
どうか、諸君は、その学会を守りゆくことが、最高善なのだと、強く確信して、自ら選んだ使命の大道を勇んで進んでいってください!」
 さらに、伸一は、こう訴え、話を結んだ。
 「自分らしく、同志とともに鉄の連結をもって、見事なる『創価班』の第一期生としての証を残していただきたい。
そして、どんな華やかな現象にも、いやな現実にも紛動されることなく、『創価班』としての誉れ高き道を、まっしぐらに進み、四十代、五十代に、人生の一切を開花させ、また、勝利に導いていっていただきたい」
 決意のこもった大拍手が、会場を包んだ。